ルネス編①「異世界からきた猫娘」
▲のつづき▼
「ふぅ~、極楽極楽……」
ルネス東区に劇場を構えるムーンスター芸団に雇われているアウリル*1のサビーネは芸団きっての花形ベリーダンサーだ。
劇場で数時間踊った後にはその日の気分によって毎日温泉を変えて楽しむのが彼女の日課だった。
ここ温泉の街ルネスは老若男女種族も身分も関係なく全ての人に等しく温泉が開かれている、エリディル大陸最大の保養地とも名高い平和な街だ。*2
泉温、泉質、涌出形式などの区分が80種を超える数多くの温泉を有する"百湯"と歌われる温泉郷だけあって、入る温泉を毎日変えても飽きる事がないという。
たかだか数日~数週間の滞在が主な観光客と違い、ルネス住人ともなればその温泉の楽しみ方は多種多様だ。
サビーネが「今日の昼風呂」に選んだのは東区のはずれにある、小さいが掃除の行き届いた綺麗な温泉だった。
ここを管理している温泉宿の女主人と従業員がこまめに掃除をしてくれているおかげだ。
サビーネはこの温泉の清潔さと、女主人の心配りが気に入っていた。
東区の温泉は温泉の妖精によって導かれた地下の海水が熱水と混合した"化石水型"温泉、別名「食塩泉」とも呼ばれ、殺菌力が強く、鎮静効果もあるため、傷の療養に訪れる者が多い。
この小さな温泉にも傷を癒しにきたであろう屈強なドゥアンの女性の姿が見られた。
「さて、軽くランチにして午後の演目のリハーサルをしておこうかな」
サビーネが湯船を上がり、脱衣場に戻ろうとした時だった。
『ザッバーーン!』
背後の温泉に「何かが飛び込む音」が聴こえた。
全く、温泉に入るマナーがなっていない浮かれた観光客だなと呆れ、脱衣場の扉を閉めた時にふと思い出した。
……さっき私以外に湯船に入っていたのはあのドゥアンの女性だけのはず。
人は見かけによらずとは言うが、まさかあの落ち着いた女性がそんな無作法な真似をするだろうか?
そう脳裏によぎったのと浴場から叫び声が聴こえたのはほとんど同時だった。
「誰か!誰か来て!し、死んでる!!」
穏やかではない叫び声にサビーネも慌てて浴場へ踵を返した。
「一体どうしました?!」
見ると、入浴用の肌着を身に着けていない全裸の女性が、うつ伏せのまま温泉にぷかぷかと浮かんでいた。
ドゥアンの女性はそれを見て腰を抜かしたのかのように湯船を上がった岩場でへたりこんでいた。
「さ、さっき水音がしたから振り向いたら、あの人が浮かんでて、全く動かないの……」
ドゥアンの女性は見かけによらず気が弱いようで、瞳には涙すら浮かべている。
サビーネは湯船に入り、そこに浮かんでいる女性を裏返した。
裏返す前にまず目にしたのは彼女の臀部から生えた桃色の尻尾、そして裏返して改めて確認したのは彼女の桃色の髪と頭に生えている猫のような耳。
アウリク*3、サビーネとは少し違うが、大きく分ければ同じヴァーナ族だ。
そしてよく観察してみれば彼女は……
「寝てる……」
呼吸はしていた。胸も動いている。
どういうわけか知らないがこの女性は眠ったまま温泉に飛び込み(?)そのまま眠り続けているようだ。
「お姉さん大丈夫です。この人死んでません。眠ってるんです」
なんとも人騒がせな珍客だ。
サビーネは「この後の興行もあるし、あとはこのドゥアンの女性に任せて帰ってしまおうか」とも思ったが、この温泉宿の女主人の事が気になった。
あの人ならきっと心配してこの子(多分わたしより年下ね)のお世話をしてしまうに違いない。
あの人の体の事を考えるとあまり無理をさせたくないなと考え、仕方なくここに残る事にした。
浴場でへたりこんだままのドゥアンの女性を説得し、まずはこの全裸のアウリクの女性を湯船から引っ張り上げてもらった。
さすがはドゥアン、軽々と彼女を抱え上げ、今度は見かけ通りの活躍を見せてくれた。
まずは彼女の濡れた髪をタオルで拭き、さらに渇いたタオルを頭に巻いた。
次に濡れた体を拭きとって、その体にもバスタオルを巻きつけた。
その間何度も声をかけ、頬を軽く叩いたりしたのだが、この女性は一切目を覚まさず小さな寝息を立てているだけだった。
「魔法や睡眠薬で眠らされているのかしら?」
少し心配になったが、とりあえず命に別状はないように見える。
一度このアウリクの女性を脱衣場の床に寝かせ、ドゥアンの女性と一緒にサビーネも自分の衣服に着替えた。
そして少し躊躇ったがそうするしかないと考え、脱衣場の外で何が起きたのかわからずおろおろしていた男性従業員に声をかけ、温泉宿の女主人を呼んでもらった。
「はいはいどうしましたサビーネちゃん……おや、このお客さんは?」
従業員に呼ばれて、年老いたエルダナーンの女主人がやってきた。
彼女の名前は「エルばあさん」。実は誰も彼女の本名は知らない。
「エルダナーンのおばあさん」だから「エルばあさん」。
それだけでは他のエルダナーンの老婆と間違えてしまいそうだが、ここルネス東区では「エルばあさん」と言えばこの女主人の事だとわかるぐらいには地域に浸透し、またそれだけの人望があった。
彼女は年の割りに良く働き、困った人がいれば世話をやいてしまうという、親切なのは結構だが自分の身を省みないという欠点もあった。
年の割りにとは言ったが、彼女の本名と同じく、彼女の年齢を正確に知る者もいない。
そもそもエルダナーンの平均寿命は200歳程度である上、人によっては外見が全く老いない者もいるので、彼女の外見から年齢を計るというのも難しく余計に年齢不詳だった。
ある者は「150歳ぐらいだろう」と言い、またある者は「俺が子供の頃にはエルばあさんはもうエルばあさんだった」と言い、この地域ではエルばあさんと言えば本名不明年齢不詳の不思議なエルダナーンの老婆を指す事で有名だった。
「エルばあさん、この人知ってますか?実はさっき湯船に突然飛び込んできて……」
サビーネと、一緒に居合わせたドゥアンの女性─旅の冒険者で名前はマリーと名乗った─はこの眠り続けるアウリクの女性について見た事を全て説明した。
「あらあら、まあまあ……それは大変だったわね」
エルばあさんはそう答えると、ほんの少し考える素振りを見せ、そしてすぐに決断した。
「それじゃあマリーさん、申し訳ないけどあなたもう少しお手伝いしてちょうだいな。この子を2階の角の部屋まで運んでベッドに寝かせてちょうだい。もしあなたの泊まる宿がまだ決まっていないなら、彼女と一緒の角部屋でどうかしら?お仕事させちゃうお詫びに宿代はまけておくわ」
「えっ、そんな、いいんですか……?」
マリーは彼女を運ぶ事については全く拒まなかったが、宿を提供してもらえる事に気が引けているようだったので、サビーネが助け舟を出した。
「マリーさん、断らないって事は、まだ宿は決まってないんですね?ここはエルばあさんの言葉に甘えていいと思いますよ。その代わりここに滞在している間は、あなたの体力を使ってエルばあさんのお手伝いをしてあげてください。これはわたしからのお願いです」
エルばあさんについてはもう1つ地域の共通認識となっている噂があった。
彼女は長い間病気を患っていて、あまり無理ができる体ではないらしい。
エルばあさん本人もそれを隠すつもりはなく、周囲の人間も彼女の人柄を見込んで喜んで手を貸していた。
マリーもそういう事なら、と今度は遠慮なく仕事を引き受けた。
とりあえずアウリクの彼女は無事で、マリーのおかげでエルばあさんに無理をさせることも防げた。
サビーネの心配事はなくなったので、今からならランチを食べる時間はないけど午後のリハーサルに間に合うとムーンスター芸団劇場へ戻る事にした。
するとエルばあさんがサビーネに声をかけた。
「サビーネちゃん、これからまた公演でしょう?ごはんを食べる時間もないんじゃないかい?」
「大丈夫です!お腹が膨れちゃうとダンスに影響が出ますからね」
「まあまあ、若い子がそれじゃあいけないよ、ちょっと待ってなさい、今賄いの残り物で何か用意してあげるからね!」
そう言うとエルばあさんは小走りで厨房へと行ってしまった。こうなると止められないし断るのも忍びない。
サビーネは「ほらね?」という顔をアウリクの女性を抱えたマリーにしてみせた。
マリーも「なるほど」と苦笑をして返した。親切心はありがたいのだが、もっと自分の体を労ってもらいたいものだ。
エルばあさんは賄いの残り物でおにぎりを3つばかり作ってサビーネに渡して見送ると、アウリクの女性を抱えたマリーを2階の角部屋に案内した。
──その夜──
……なんだかあったかいお湯に浸かっていた気がする。
そういえば……寝る前に、お風呂、入ったっけ……?
う~ん……ごはん……食べたっけ……?
あれ……今、何曜日だっけ……ここ、どこだっけ……?
「あたし」……だれだっけ……?
目を覚ますと見知らぬ部屋にいた。
窓の外は暗く、もう夜なのはわかった。部屋にはランプが灯され視界ははっきりしていた。
外から時折陽気な声が聴こえてくるので、それほど深夜ではないのだろうか?
むくり、と起き上がって布団を外すと、自分が何も衣服を身に纏っていない事に気が付いた。
……あれ?なんだ?酔っ払ってなんかしちゃったか?
参ったな~、まさか自分が酔った勢いでそんなことするとは思ってもみなかったぞ。
どうしようかな~、何て言って断ろうか。
素直に酔っ払ってて覚えてませんで乗り切ろうかな。
いや待てよ、そもそも相手がどんな人か見てみないとな。
ボーっとした頭で考えていたが、枕元に衣服が畳んであることに気が付いた。
あたしの服……じゃないなこれ。
まあでも、ここに置いてあるってことは、これを着ていいってことだなきっと、うん。
違ったら謝ればいいやと思い、枕元にあった衣服に着替え始めた……すると、
『ガチャ』
部屋のドアが開いて、大柄な人影が部屋に入ってきた。
あ、やばいぞ、このパターンは予想してなかったな、こりゃ力じゃ勝てないぞ、うまい事誤魔化して逃げなくちゃ……。
一瞬の緊張感の中、固まって考えていると、その大柄な人影はとても繊細な女性らしい声をかけてきた。
「あ!もう起きて大丈夫ですか?どこか痛いところありますか?」
ん……?ルガディンの女性、かな?
あれれれ??女性か~、そうか~、そういうパターンもあったか~。
いや、むしろ、アリかも?悪くない、うんうん、全然悪くない。いい、むしろいいよ!
あたしが考え込んで固まっていると、彼女はそろそろとベッドに近づいて顔を近づけてきた。
「もしも~し、お話できますか~?」
「……あ、はい」
咄嗟にあほ面で返事を返してしまった。
「良かった~。あの、ごはんとか食べられますか?今ちょうど食堂で夕飯を食べてて、あなたが起きてたら食べられるか聞いてきてって言われて見に来たんです」
……?????
んんんんんん~~~~?????
これは、ひょっとして、ひょっとすると、「全く違うパターン」じゃないのかな~??
急激に自分が何を考えていたのかを冷静に考え出して顔が真っ赤に染まってきた。
「あの、大丈夫ですか?熱とかあります?お顔がとても赤くて……」
「だっ、だっ、だいじょぶ、だっ」
なんか今とてもくだらない事を言ってしまった気がする。
「大丈夫、です!食堂、行きます!ごはん、頂きます!」
「あ、はい、ご案内しますね、ついてきてください」
危ない危ない、なんだかとても失礼な事を口走ってしまう所だった。
なんだか頭がはっきりしないままルガディン(に見えるんだけど、ちょっと違う?)の女性について階段を降りて行く。
頭がボーっとしてるのはきっと寝すぎたせいなのかな。お腹が空いてるからかもしれない。
ごはん食べたらきっとはっきりするでしょ、うん。
一階に降りると、一軒家にしては長い廊下といくつかのドアが並んでいるのがわかった。
さっきまで自分がいた部屋を出た時にも思ったが、おそらくここはどこかのお屋敷?いやそこまで豪勢ではないな。小さな宿屋のようなものだろうか。
食堂に入ると更に二人の女性が席に着いていた。
こちらを見ている、というより「あたし」を待っていた?
「やっと起きましたね。よかった、わたしの服でサイズあってましたね」
ミコッテ……に見えるが良くみると耳の形が違う、気がする。
あたしと同じくらいか少し上の年齢に見える女性がまず声をかけてきた。
その言葉から察するに、おそらく枕元にあったこの衣服は彼女の物で、理由はわからないがあたしがこれを着るように用意してくれたのだろう。
「あ、えっと、着替え、ありがとう」
「いえいえ」
「ずうっと眠っていて、お腹が空いただろう、さあ、お座り」
ミコッテ風の女性の隣に座っていた、エレゼン?のおばあさんが優しく声をかけてきてくれた。
あたしの勘に間違いがなければ、おそらくこの人がこの宿の主人だ。
「ありがとうございます、いただきます……」
まだ自分がどんな迷惑をこの人達にかけてしまったのかわからないので気後れしつつ、遠慮がちに席についた。
テーブルの上に並んでいたのは鍋料理だった。
土鍋の中に入っていた具材は、キノコ、野菜、鶏肉、白くて柔らかい……これは……そう、豆腐だ、知っている。
それらを出汁を取ったお湯で煮込んで、小皿に取り分け、黒くて酸味のあるタレを少しずつ足しながら、ふーふーと息で汁を冷ましつつ口に入れる。
「おいしい……」
なんだか久しぶり……もう何年も何も食べていなかったような気持ちだ。
「美味しい~、私もお鍋久しぶりです」
隣に座ったルガディン風の彼女も一緒に食べる。
「お鍋?変わった名前の料理ですね、ステーキを焼いてもフライパンとは呼ばないでしょう?」
斜め向かいに座ったミコッテ風の彼女が変わった感想を言う。
「ふふふ……これはね、昔旅人に教わった料理なのよ」
エレゼン風のおばあさんが鍋の中身を小皿に取り分けてくれる。
しばらくは和やかに食事を楽しんだ。
「……さて」
ミコッテ風の彼女─食事中の会話からサビーネという名前だとわかった─が改まって切り出した。
緊張する、が、これはほぼ間違いなくあたしの話だぞ。一体何をしたんだあたしは。ドキドキ……。
「あなた、お名前は?どこからきたの?なにしにきたの?」
「名前……名前……は、えーっと」
なんだっけ、思い出せる思い出せる、えーっと、そうそう、みずほ、じゃなくて、えーっと、そうだ
「あ、ヴィヴィアンです」
「ア=ヴィヴィアン?」
「ああ、そうじゃなくて、ただのヴィヴィアンです」
「失礼、ヴィヴィアンね。同じヴァーナ同士呼び捨てで構わないですよね?わたしはサビーネ。見ての通りアウリルです」
何か違和感を感じたが、自己紹介をされたのはわかった。
同じヴァーナ同士?アウリル?
「わたしはこのルネスのムーンスター芸団で踊り子をしていて、この宿のエルばあさんとはそれなりに親しくさせてもらってます」
文脈からして「ルネス」は地名かな?国?街の名前かな。
エルばあさんは、このエレゼン風のおばあさんだな。さっきから穏やかに話を聞いている。
「私はマリー。えーっと、ドゥアン、のサムライです」
今度は隣に座ったルガディン風の女性が自己紹介をした。
おそらく「ドゥアン」は種族名?ルガディンではないらしい。
ということは先ほどのヴァーナというのも種族名か、アウリルってのはなんだろう。
サムライはわかるぞ。「侍」だな。つまり職業サムライ、傭兵や冒険者なのかな?
「生まれは、えーっと、ここより北の方で、つ、強くなるために、武者修行をしています!」
そう宣言する彼女の言葉にはどことなく覇気というのものが感じられず、まあ「これから強くなる」のなら、それもまた無理はないかなという気持ちになった。
「はい、ヴィヴィアン、あなたの番ですよ」
サビーネに話を振られた。次はエルばあさんの番かと思ってたけど、まあいいか。
「えーっと、あたしの名前はヴィヴィアン。サンシーカー族のミコッテで、出身は森の都グリダニア。えーっと、職業は吟遊詩人を、いや、踊り子だったかな、からくり士だったような……竜騎士だったっけ……」
なんだか記憶に靄がかかったようにはっきり思い出せない。
思い出そうとすると、たくさんの情報が出てくるのだが全く整理できない。何が本当のあたしだっけ?あたしって何者だ?何をして生きてきたんだ?ここで何をしている??
「サンシーカー族?ミコッテ?」
「グリダニアって、どこですか?」
「バードにダンサーに、からくり士ってのはわからないが、竜騎士ってのはつまりドラグーンかい?随分たくさん冒険をしてきたんだねえ」
サビーネ、マリー、エルばあさんが次々と質問をしてくる。
なんとなくわかってきた。この感覚、初めてじゃない。あたし「また」異世界に来たんだ。
「あの~、信じてもらえないかもしれないんだけど、あたし多分、ここじゃない異世界から来たみたいなんです」
すると三人は一瞬だけ固まって、次の瞬間あっさりと笑顔になってこう言った。
「あ~!なるほど異世界から!」
「あなたもアーシアンなんですね!」
「そうかいそうかい、そりゃあ難儀だったね」
意外なほどあっさり受け入れてくれたので、その後の面倒な説明をどう続けようか考えていたあたしは肩透かしを食らった。
3人があまりにもあっさり受け入れてくれた事にあたしが驚いていると、そこでようやくあたしがここに現れた経緯を教えてもらえた。
「温泉に、全裸で」
「そうなんです!私湯煙殺人事件かと思って驚いちゃって!」
「マリーったら腰を抜かして泣きそうになってました」
「溺れなくて良かったねえ」
どうやらあたしはその後半日近く眠りっぱなしでこの宿の世話になっていたらしい。
サビーネは劇場での公演を終えて、あたしと、エルばあさんの事を心配して戻ってきてくれたらしい。何も身に着けていなかったあたしの為に衣服まで用意してくれて。
マリーはあたしを同部屋に運び込んだ後、宿代代わりにこの店の雑用や風呂掃除を教わっていたそうだ。彼女は飲み込みが早く、一日で一通りの雑用仕事を覚えてしまったようだ。
エルばあさんは、時折あたしの様子を確認していたものの特に危険な事もなさそうなので、お客さんの食事を用意したりマリーに仕事を教えたりしていたらしい。
あたしがこの世界に現れてからの今日一日の流れは大体わかった。
今日はもう遅いので、続きはまた明日以降ということで今夜の食事はお開きになった。
サビーネは自分の芸団の寮があるらしいので今夜は帰っていった。
あたしとマリーはエルばあさんと一緒に食堂を片付け、自分達の部屋に戻った。
「とは言え、さっきまで眠ってたから全然眠くないんだよね~」
「ですよね」
「マリーは今日一日働いて疲れてるよね、無理しないでいいから眠ってね」
「いや~それが、私もこの体になってから体力が有り余ってて、まだまだいけちゃう感じなんですよね」
「へ~。体力あるんだね~……ん?この体になってから?」
「ああ、いや、なんでもないです、まだ全然眠くないですから何かお話しましょうか」
「そうだね、できればこの街の事やこの世界の事を少し教えてもらいたいな」
「うーん、そうですね。私も旅を始めたばかりなのであまり詳しくは知らないのですが、異世界から来たヴィヴィアンさんにも関係あるかもしれない、異世界から来た学校の話をしましょうか」
「異世界から来た学校?」
アリアンロッドRPG 2E 「穿て 異界の門」外伝
異世界人ヴィヴィアンの旅路
つづく▼