ぬるっとオススメ復帰してた話

 なんか1月ぐらいで投稿止まってるけどTRPGのセッションは毎月続いてるし、自キャラ過去歴小説もあーしてこーしてって妄想は進んではいるんだけど、自分で考えたフォーマットに苦しめられて書けなくなったり、小説内で面白おかしくアイドルグループいじりをしつつ自キャラ話進めようとしてたら現実世界で面白くもおかしくもないいたたまれないアイドルグループ事件が起きたりでなんだよも~ってなってたので筆が進まなくなってたのだけどそれはいったん置いといて。

 

 先月のFINAL FANTASY XI ウェルカムバックキャンペーンに軽い気持ちでログインしてみたら、あれよあれよと言う間に気が付いたら課金して6月は普通に復帰してしまったよお前さん。

 

 今までもウェルカムバックでたまに覗いてみることはあったのだけど、「復帰してもそんなプレイ時間さけないし」「(PS2勢だったから)1からPCでマクロ組むのだるいし」とかめんどくさくて乗り気になれなくて。でも今回は気持ちの問題含め時間的余裕ができてきたのと、17周年アニバーサリーイベントとしてあのアイドルグループSHINING BLESSの触手会もあってついついのめりこんでしまいましたとさ。

wiki.ffo.jp

 

 30レベル以下のジョブでイベント参加するとものの5分か10分あればレベル1から30まで上がっちゃう触手会だったので、Mizuhoだけじゃなくて昔Fairy鯖から移籍させた買い物用倉庫猫も、Nareemaさんが好きすぎていつでもNareemaさんを見ていたいから青AF着るまでやりたいなと軽率な気持ちで作ったまま放置されてたヒュム♀F2金のNareeemaさんも、取得してたジョブは全部レベル1から30まで上げてしまいました。

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SHINING BLESSライブ参加列

触手会並んでたら同じ顔の人がたくさん集まってきて怖かった。

 

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 Beforeの記録メモしとくの忘れたけどMizuhoは確かからくり42ぐらいで止まってたし風水士も魔導剣士も取ってなかったけどこの機会にアドゥリンにも進出して30まで一気に上げちゃった。

 

 ログインボーナスのデイリーポイントがこれ以外の倉庫3キャラ(無駄)にも一人13000ポイント近く溜まってたから、録画したテレビ番組を消化しながらゴブリンの箱の前でボタン連打して雑貨1の矢弾系にして全部店売りしてたら一人80万G近くになったので、大体合計で400万~500万G近くになってなんだかすごいことになってきちゃったぞって金銭感覚おかしくなってオートマトンのアタッチメント買い漁ったり昔憧れて手が届かなかった装備が安くなってたからついつい買ってたらすぐなくなった。

アタッチメント8割~9割揃ったから大満足。

他にも今ならエミネンスポイント交換装備売るだけで簡単に小銭稼ぎできていい時代になったもんだ。

 

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 フェイスも集めて一人からくり4体操作(一体違う)したり過去エリアの異界の口とサバイバルガイドとホームポイント調べてテレポできるエリアも開通させまくったしエミネンスしながら専心効果でレベル上げてたらあっさり50越えて昔着たかったクロウシリーズ装備も着られてどんどんモチベーションアップ!まさかエミネンス交換品でクロウシリーズ揃っちゃうとはな~。うっかり競売で「やっすい!」とか買って損しちゃったぜ……。安くねーよ。

 

 大体このあたりでウェルカムバックキャンペーンの期間終わってたんだけど、追加ディスクのディスカウントキャンペーンも同時開催してたのでせっかくだからとついついポチッたらたまたまポイント溜まってて無料で買えちゃったので「え~、無料でいいんですか~?いや悪いよ~」って気持ちでついつい普通にCrystaで課金。全力で釣られてやったわ。

 

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 からくり60越えてアラケルアクトン着てみたり、竜でスコハネ着てみたり。スコハネがあっさり手に届く時代。

 

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からくりAF3 四コマ劇場

 

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イカレたやつだぜイルキワラキ

 

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エルパラシオン~;;

 何度も動画で見たからくりAFクエを自分で体験して楽しい~ってなって嬉しかったので竜AFクエもやってみたらラストめっちゃ感動的でSS連写しまくってた。エルパラシオンのフェイス追加ないの~?あとナリーマさんも。

 

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憧れの紫プラモ!

 10年くらい前にネ実で引退宣言してた人にもらったダークメザラク、やっと装備できました。ありがたく使わせてもらってます。からくり用にってもらったダークサインティも使わせてもらいました。レベル帯過ぎちゃったけど記念に大事に取っておきます。

 

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LV75解放限界突破挑戦!

 ハルブーンのトロールマトンとNadeshiko(うちの子)とメネジンアヴゼンで戦ってるの子供の喧嘩みたいでかわいかった。

 

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はじめてのオポ昏

 75限界突破も初めてだったのでめっちゃビビりながらわざわざ競売でオポオポネックレスを3万で買って(ミッション進めてないからまだ取ってない)、昏睡薬1ダースを6万、イカロスウィング9千、占めて10万G近く払って準備してShamarhaan師匠に挑戦!

 

 したんだけど、フェイス連れてったらWS撃つまでもなく速攻でValkeng沈むし、「あ、あれっ?」って思ってせっかく金払って貯めたTPもったいないから師匠に空鳴拳ぶちこんだら一発でクリアしちゃって、なんか、すみませんでした……。オポオポネックレスまだ売れるかな……。からくりAFの素材代にすればよかったよよよ。

 

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ついでにMaatも挑戦

 75限界突破があんまりにも簡単だったので、ついでに竜騎士でもMaatの限界突破クエに挑戦。エミネンスのウィークリーミッションも消化できるし。当然フェイスと一緒で5vs1なので数の暴力でじじいフルボッコ。すまん。なんかいろいろすまん。

 

 

 という感じでリアル世界よりも充実したヴァナ生活を認可されていたみずほさんでした。ところでアパートの上の階で夜中に喧嘩してたり近隣で大騒ぎしてるアレなやつ見つけると嬉々としておまわりさん呼んじゃう性格なので昨夜も広域シャウトで999ドルで5万ギルとか叫んでたアホがいたので律儀にGMコールしておいた。堂々としすぎだろ。

アリアンロッドRPG 2E 本編シナリオ「穿て 異界の門」各章あらすじのようなもの

 本編終了後に書いてるヴィヴィアンの行動や心情をまとめたあらすじのようなメモ。

 
第一章《香炉に灯された焱》にて─────

ルネスで自分を保護して世話をしてくれた老婆の遺言で、ヴィヴィアンは石版の謎を解く為にエリディル大陸東方は州都イエーレンへとやってきた。
そこで出会ったのは同じく石版の謎を解き明かそうと集まったエルダナーンの老人ムンディ、同じくエルダナーンの少年ティールマン、
そして石版の謎に関係するらしい「魔教」に恨みを持つドゥアンの青年シタデルだった。

4人は奇妙な縁を感じながらも目的を同じくする者同士、ギルド「ストーンズ」を結成した。
ストーンズの活躍により魔教の教宝「インセンスバーナー」を入手する事に成功し、教宝は神殿へと保管された。
しかし図書館長ジモラクとイエーレンの騎士団、領主スナーフと魔教徒との繋がりにはまだ謎も多い。
ストーンズの面々は上級神官ポーリスと信頼を深めて次なる調査へ向かっていった。

 

(教宝インセンスバーナーは用途によっては異世界への扉を開く鍵になるかもしれないとの情報について……)
シタデル「ヴィヴィアンは自分のもといた世界には帰りたくないのか?故郷の世界に家族とかは居ないのか?」
ヴィヴィアン「家族?うーん、覚えてないからなあ」
ヴィヴィアン「なんとなくだけど、あたし別に戻る必要はないんだよね」
ヴィヴィアン「たまに前の世界での自分を夢に見るんだけど、あっちのあたしはあっちのあたしで生きてる気がするから、別にあっちの世界からいなくなった訳じゃない気がするの」
ヴィヴィアン「全部想像だけどね」

 

 


第二章《ドールズ・ハウス》にて─────

上級神官ポーリスからの依頼を受け、錬金術師リモーノフの護衛にやってきたストーンズ一行。
そこで待っていたのはイエーレン騎士団のロブとカーム、怪しい執事ジルム、生気の感じられないリモーノフ、そして意志を持った不思議な人形の少女アンヌだった。

 

(アンヌの自室にて……)
ヴィヴィアンは何となく気になって少女の人形を見つめてみた。
「人形……か……」
時折夢にみる異世界の"自分ではない自分"の事がフラッシュバックする。
「人形……パペットマスター……からくり士……ナデシコ……」
少し寂しそうに、少女の人形に手を伸ばしてみる。
「この世界では、関係ないよね……」

 

(初対面のアンヌと打ち解けた?様子のヴィヴィアン……)
ヴィヴィアン「あたし、この子と友達になったから!」
ムンディ「わからん、全くもってわからん」
アンヌ「安心なさい、お人形とお友達になれる素敵な方なんてそうそういないわ」

 

その夜突然起きた殺人事件!犯人は?リモーノフの行方は?この屋敷の地下には一体何が隠されているのか?
一人飛び出したアンヌを追いかける形で屋敷の地下を捜査した探偵団ストーンズ
苦労の甲斐あって本物のリモーノフを救出する事ができた一行はアンヌをギルドの仲間に迎える事にした。

 

(リモーノフ救出後、屋敷の中庭のお茶会にて……)
ヴィヴィアン「全然関係ないけど、あたし今回アンヌに会ってからなんとなく前にいた世界の事思い出したかも~。前の前の世界の事だけどね」
シタデル「ほう~どうしてこの世界に飛んだかきっかけ見たいのも思い出せるか?」
ヴィヴィアン「さあ?それはわかんないな~。なんか神様が呼んだら違う世界に飛ばされてたとかそんなんじゃない?よくあることだよ~」
シタデル「何の脈略もなく突然飛ばされたら怖いな・・・俺だったら気が狂ってしまう・・・」
ヴィヴィアン「記憶がなければ狂いたくても狂えないんじゃない?あたしみたいに異世界来る度に記憶リセットされてる人だけじゃないかもしれないけどね~」
ティールマン「会ったことは無いけれど、異世界から転生してくる人も居るらしいし。そういう人はヴィヴィアンみたいに記憶がリセットされてないんじゃないかな」
アンヌ「・・・よくわからないけど、記憶喪失だったの?」
ヴィヴィアン「あたしもよくわかんないけどそうだったみたい」
アンヌ「大変・・・ね?」
ヴィヴィアン「そうでもないかな~?新しい事ばっかりで意外と新鮮で楽しいよ」
アンヌ「ふーん、前向きなのね。ヴィヴィアンらしいと思うわ」
ティールマン「ヴィヴィアンの神経が丸太ぐらい太いってだけだと思うな・・・」

 

アンヌと出会った事から「過去の異世界での自分」について記憶を取り戻したヴィヴィアン。
仲間達に詳しくは語らなかったが夢で見ている並行異世界の自分はヒューム(この世界でいうヒューリン)(ヴィヴィアンの世界ではヒューラン)の女性で名前はミズホ。
拳1つで闘うモンクとして冒険をしていたが仲間達と出会い、国から国へ旅を重ね、時には料理、時には彫金細工を作り、季節の催しにも進んで参加するようなお祭り好きだった。
ある時は戦士、ある時は竜騎士、またある時はからくり士といくつものジョブを転々としていった。
アトルガン皇国という大国でからくり士兼踊り子として傭兵稼業をしながら暮らしていた記憶までは取り戻したが、そこから先は靄がかかったように思い出せない。
夢でもそれまでの過去は出てくるがその先となるとまるで「その先はまだ経験していない」かのようにわからなくなってしまう。
とは言えそれを思い出そうとする事に固執するような性格ではないので、「知らないものは知らない」で割り切っている様子。

 

 


第三章《イージー・ミッション:オリン村編》にて─────

神殿の依頼で神官達の護衛任務についたストーンズ。魔教が絡んでいない簡単な任務と思いきや……?

(オリン村シャーマンの老人との会話にて……)
アンヌ「おじいさんは、魔教ってどういうものと考えてる?」
アンヌ「村長さんは必要なものっぽく言ってたわ」
老人「私からしてみれば、自然に宿る精霊を相手にしているのだからな・・・どちらもある特定の神を信仰する異教徒ということになる」
ムンディ「悪ではないと?」
老人「神殿の神も魔教の神も私からしてみればな・・・悪というか異なる神を崇める人々だ、ということになる。どちらにつこうとかは思わないのじゃ」
ヴィヴィアン「ま、そうかもね。あたしもこの世界からしてみればよそ者だし、どっちが善か悪かなんてのは判断つかないかも」

 

(縛り上げた追い剥ぎ達を尋問中の会話にて……)
ヴィヴィアン「ねえ!世の為人の為に真面目に働きたいんだって!どうする?」
ティールマン「きちんと裁きを受けるべきだ」
シタデル「うーん、更正の見込みがあるか分からんが、こう言うのは神殿に捕らえて裁きを受けるべきではないか」
ヴィヴィアン「……だってさ、残念でした~」
そして斧の追い剥ぎに投げつけた毛布を広げ、追い剥ぎの体を包んでやった。
ヴィヴィアン「ま、あんたの事は一応更正の余地ありって言っといたげるよ、聞いてくれるか知らないけどね」

森の中で待ち伏せていた追い剥ぎ達の処遇について、仲間達の意見を聞くとどうやら死刑が一般的らしい。
ヴィヴィアンの記憶しているヴァナ・ディールでは監獄に閉じ込めるなどの刑罰が主流で、死刑にするほどではないのでは?と思っていた様子。
異世界人ならではの倫理観のズレから捕まえた追い剥ぎ達を自分の判断で処分しようとしていたヴィヴィアンだったが
仲間達が傍にいてくれたおかげで、凶悪な犯罪者が世に放たれる事も、ヴィヴィアンによる無益な殺生も防がれた。
もっとも、ヴィヴィアンの手が血で汚れていないかどうかは、記憶がないヴィヴィアンにはわからないのだが。

 

 

 

 

以下追記▼

アリアンロッドRPG 2E 自キャラ経歴拡大私小説の目次代わりの記事

crimsondarkness.hatenablog.j

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以下後日追記▼

 

 

ルネス編④「オーディション前夜」

crimsondarkness.hatenablog.jp

▲のつづき▼

 

 

 ムーンスター芸団劇場で団長代理のジョセフと明日のオーディションの約束を取り付けた3人は、近くの露天でいくつか食べ物を買い込み「風光明媚」に戻ってきた。時刻はまだ昼過ぎで、エルばあさんから夕方までに帰ってきてくれれば助かると言われていたので予定より大分早く帰ってきたことになる。

「ただいま~」

「ただいま帰りました~」

 「おや、もう帰ってきたのかい?あらサビーネちゃんも一緒かい。お客さんも出かけてるしみんなでお昼でも食べようかね?」

「そうしようと思ってお昼ごはんを買ってきたんです。エルばあさんも一緒に食べましょう」

4人は昨夜のように食堂のテーブルに集まり、買ってきた串焼きやソーセージ、団子やサンドイッチを並べて食事をしながら、ヴィヴィアンが神殿で冒険者登録をしてきた事や、マリーとヴィヴィアンがムーンスター芸団でオーディションを受ける流れになった事などを報告した。

 

「そうかいそうかい、冒険者として働くことにしたのかい。まあ私はここにいてくれれば助かるし遠慮するこたないと思ってるが、私の体の事もあるし、いつまで置いてあげられるかわからないからねぇ。自分で働き口を見つけられるならそりゃ何よりだ。若いんだから何でもやってみるといいよ」

 エルばあさんはそう言いながら3人にお茶を入れてくれてた。

 

 食事を終えた3人は公演で汗をかいたサビーネと共に一緒に温泉に入る事にした。まだ着替えの服や入浴用の肌着*1を買っていなかったヴィヴィアンは、この時やっとこの世界での自分の衣服を自分の金*2で買うことができた。サビーネに借りた服は洗って返した方がいいかと聞いたが「どっちでもいいですよ。どうせ他に着るものないんだから、そのまま持ってても」と言われたので甘える事にした。

 

 3人が入浴用の肌着に着替えて浴場へ入ろうとすると、ちょうど温泉からフィルボルが二人出ていく所だった。エルばあさんはさっき「お客さんは出かけた」と言っていたので、宿泊客以外の入浴客だろう。フィルボルはヒューリンの子供のようにも見えるし男性か女性か見分けるのが難しかったが、一人は3人と同じ女性用脱衣場へ入ってきて、もう一人は隣の男性用脱衣場の戸を開いていたのでそれでわかった。

「あ、ここ混浴だったんだ」

 ヴィヴィアンはこの時初めて気付いて、自分が昨日全裸でここに現れたという話を思い出して今さらながら恥ずかしくなった。ヴィヴィアンが何を気にしているのかすぐに察した二人は「この3人しかいなかったから大丈夫ですよ」と笑ってフォローした。

 

 湯船に入る前にシャワーで汗や汚れを流すのが入浴マナーだ。ルネスでは温泉の妖精と契約しているおかげでシャワーからもお湯が出る。いつでもお湯の出るシャワーというだけでも他の街では珍しく、温泉以外でもこういった部分が観光客を驚かせて人気に繋がっているらしい。

 

 

「ふぅ~、極楽極楽……」

 人肌より少し温かい40度ほどの湯船に肩まで浸かると、サビーネはいつもの癖でついこの言葉が出てしまう。「極楽」という概念はこのアリアンロッドの世界では宗教的にも一般的にも浸透していないはずだが、誰に教わったのかサビーネはいつのまにか「温泉に浸かるとついつい出てしまう言葉」として覚えてしまっていた。

 

「うーん、極楽~」

マリーも釣られて言ってしまい、

「は~。気持ちいい~」

ヴィヴィアンも温泉を満喫していた。

 

 

 

「……って!のんびりしてる場合じゃないですよ!」

突然湯船で立ち上がって声を荒げるマリーにヴィヴィアンとサビーネはきょとんとしている。

「どうするんですかオーディションって!あんなにハードル上げちゃって!ヴィヴィアンはともかく、私何も特技なんかないですよ!サーカスだって初めて見たし、アイドルのコンサートと2.5次元ミュージカルぐらいしか見た事ないんですから!」

「え~?大丈夫じゃない?マリーのお話面白いから、何か面白い話書いてみれば?あたしがそれ演奏したり歌ったりしてみるよ~」

ヴィヴィアンの返事はあまりにも能天気だったが、サビーネはマリーの言葉にあった違和感に気がついた。

「コンサートというと、社交界で?ひょっとしてマリーはどこかの国の貴族だったりするのですか?」

「え、ええっ?いや、貴族だなんて、全然違います、私はただの旅のサムライで……」

「それにニイテン、ゴジゲン?ミュージカル?というのは一体?」

「えっ?サビーネさん、ダンサーなのにミュージカルを知らないの?」

「えっ?ダンサーが知らないのはおかしいものなんですか?」

「えっ?なになに?なんのはなし?」

ヴィヴィアンはそもそも何の話か理解する気もなかったのだが、質問されるとつい必要以上に教えてしまいたくなるのがオタクの性。*3マリーは自分の知っている限りのミュージカルについての知識を総動員して二人に説明した。

「……お芝居を、歌と踊りで表現するのですか。お芝居の途中で突然歌いだしたらお客さんは混乱しないのですか?それに舞台役者は歌手ではないし、踊り子や歌手の仕事がなくなってしまうのでは?聞けば聞くほど無理があるように思えるのですが」

「人気があるおとぎ話を舞台で演じるのはこの世界でもやってるんじゃない?なんで2次元3次元なんて変な分け方をするの?どうしてその間を取ると2.5次元なの?5はどこから出てきたの??」

「いやヴィヴィアンそれは小数点という物で、まず0.1が十個集まると1.0になるんです」

話が脱線してのぼせそうになってしまったので続きはヴィヴィアン達の部屋で話す事にした。

 

 

「ふむ、役者と踊り子と歌手の役割が兼業される話はなんとなくわかりました。つまりダンサーがバードを兼任する事で歌と踊りを両方兼ね備えるスーパースターになるようなものですね」

「みかんの房を10個に分けるとそれぞれが0.1で、1つにまとめるとみかんひとつって事だよね、わかったにゃー!」

「ヴィヴィアン、その話はもういいですから」

 

 

 算数が理解できたヴィヴィアンは、二人が話しているミュージカルの話をみかんを食べながら黙って聞くことにした。マリーは一瞬(猫に柑橘類を食べさせちゃいけないんじゃなかったっけ?)と不安になったが、ここは異世界だしヴィヴィアン本人が気にせず食べているのできっと大丈夫なのだろうと思った。

「……という訳で、アーシアンの世界ではミュージカルやコンサートやライブといった舞台娯楽からスターが生まれる事もある"らしい"のです」

「なるほど、異世界の娯楽文化、侮れませんね……それにしてもマリー、本当にアーシアンについて詳しいですね。ひょっとしてあなた……」

「あ、えっとー……」

そろそろ誤魔化すのも無理が出てきたし、この辺で自分もアーシアンだと告白してしまおうかな、とマリーが覚悟を決めようとした時、

アーシアンの街に行った事があるんですね?」

間違ってはいないのだが核心をついてこない微妙な指摘をされてしまい、否定する訳にもいかずヴィヴィアンに続いてサビーネにもアーシアンであると言い出しにくくなってしまったマリーだった。

(ケモミミっ子はみんな天然なのかしら?)

 

「ねぇねぇ、あのさあ、そしたらこういうのはどう?」

マリーがアーシアンだという事実には触れられないまま、ヴィヴィアンが話を軌道修正してきた。

「マリーが知ってる異世界のお話を元にして、台本を書くの。それを元にあたしが音楽を演奏したり、歌ったり、サビーネが踊ったりするのよ、あ、勿論マリーも役者として舞台に立ってね」

「二人のオーディションなのにわたしも踊るんですか?」

「え?私がお話を作って、え?役者に??」

「うん、まあ明日までだから短くていいんだけど、なるべく登場人物が少なくてジョセフさんが驚くような珍しい話をさ。サビーネはあれだけ話を大きくしたんだから、当然協力してくれるでしょ?」

「ま、まあ協力するのは構いませんけど、いいのかなあ?わたしがオーディションに参加しちゃうのはずるくないですか?」

「そこはほら、ジョセフさんが見て判断するでしょ。あたし達が見せるのはミュージカルっていう文化そのものと、マリーのお話を作る能力、ってことだよ」

「いや、えーっと、私が話を作ってる訳じゃなくて、歴代少年漫画や時代劇がですね……いやそれより役者なんて私学芸会以来一度もやったことなんてないですし、無理ですよ!」

「いいからやるだけやってみようよ~。別にオーディション落ちたからって死ぬ訳じゃないんだし、ダメなら他の仕事探してみればいいじゃん?それにミュージカルっていうの面白そうだし、マリーの作る話ならきっと上手くいくよ」

 

 マリーは随分気楽に行ってくれるものだなと思ったが(そう言われて見れば確かにそうか、何しろここは異世界なんだ、日本での失敗を恐れて挫折して夢を諦めるような考え方をする必要はないし、異世界転生した主人公は大体何やっても上手く行くようにできてるんだもの、やってみるか!)と考えて気持ちが前向きになってきた。

 

「うーん、まあいいでしょう。とは言え時間はありませんよ。どんなお話を作るのか今のうちに簡単に説明しておいてください、わたしはどんな踊りをすればいいか考えておかないといけませんから」

「えーっと、そうですね、急に言われても……何がいいのかな」

一番好きな「魔王鬼丸」の出てくるあの作品は、3人でわかりやすく短い時間で演じるのは難しそうだ。鉄板なのは新撰組赤穂浪士だが役者が多すぎる。水戸黄門暴れん坊将軍桃太郎侍なんかは王道の勧善懲悪で万人ウケするだろうがインパクトは薄い。何か異世界人にも受けて、なおかつカルチャーギャップを感じつつ、王道のストーリーより少し捻った珍しい話、少ない人数でもできる作品と言うと……

「あ、あのシーンなら、3人いればできるかも!」

「なになに?聞かせて聞かせて」

「どんな話なんですか?」

 

 マリーが二人に話したのは日本のある有名少年漫画、それもマリーの好きな悪役と悪女が出てきて主人公がそれを成敗するシーンだ。この話を選んだのには理由があって、やはり異世界に転生したと言えど他人の作品を二次創作して自分が作った事にするのは躊躇いがあった。同人作家の端くれとして二次創作をオリジナルと言い張るのはモラルに反する。そしてそんな事はありえないだろうが、万が一この作品でお金を稼げてしまった場合、出版社や作者本人から訴えられてしまっては元も子もない。オーディションに受からなければ脚本が採用されるかどうかもミュージカルがヒットしてお金を稼げるかどうかもわからないのだが。そしてまさか異世界にまで日本の出版社や作者が訴えに来る事なんてあり得ないだろうが、この作品なら確か作者本人が何かの罪で書類送検されていたはず。つまり訴えようにも「作者本人の方が後ろめたくて訴えを起こせないだろう」と読んでの事だった。

 

──元日本人の同人作家三澄麻里33歳独身。転生したのは異世界のドゥアンのセラトス*4。日本語ならその種族は「鬼」と呼ばれていた──

 

マリーの説明を聞いた二人は呆気に取られていた。

「えっ、その女性、死んじゃうんですか?好きな人に殺されて?」

「マリーの話し方だとまるで悪役の方がかっこよく聞こえるけど、いいの?間違ってない?」

「いいんですそれで!元々これは悪役をかっこよく描くためのシーンですからね!」*5

「た、確かに珍しいしインパクトのあるお話ですが、こんなお話、受け入れてもらえるんでしょうか」

「大丈夫!古来より悲恋物は人気があるんです!悪役との報われない恋も間違いなく女性の心を惹き付けます!このヒロインの役はサビーネさんにお願いします!」

「ええっ?わたし、殺されちゃうんですか??」

「そこはなるべくギリギリまでリハーサルして怪我しないように練習しましょう!台詞も少ないですし、あなたの人気なら女性客が失神するかもしれません!」

「オーディションだからお客さんはいないんですけど……」

「きょ、う、りょ、く!してくれるんですよね!!」

「は、はい……!(マリー、どうしたんでしょう、人が変わってしまったようです)」

「ねぇねぇそしたらあたしは何すればいいの?シーンに合わせて歌詞書いてくれたら曲作ろうか?」

ヴィヴィアンも一緒に協力しようと思って提案すると、キッ!とマリーに睨まれた。

「なに言ってるんですか!ヴィヴィアン!あなたは主人公です!歌は歌ってもらいますが作曲してる時間なんかありませんよ!まず台詞を覚えないと!あなたは不殺を誓った伝説のサムライなんです!今から刀の扱いに慣れておいてください!」

マリーはサムライのスキル「スピリット・オブ・サムライ」で自分の愛刀「正宗」を出現させヴィヴィアンに持たせた。*6

「え、刀って、真剣なの??ま、待ってあたし、刀なんて使った事……あ、あるかも?しれないけど、お芝居で真剣振り回すのなんて危なくて無理だよ!」

「当日は摸造刀か芸団にある小道具の剣を借りましょう!」

「待ってください、確かに芸団にも小道具の剣はありますが、一晩で付け焼刃のサムライの演技を叩き込むよりも、主人公の役柄の方をヴィヴィアンに寄せてみたらどうでしょうか?」

豹変してしまったマリーを宥めるようにサビーネが提案した。なにしろ自分も舞台に出る事に決まってしまったのだ、うっかりヴィヴィアンの振り回す刀で怪我をしたくはない。

「む……そう言われて見ればそうですね。今からヴィヴィアンを抜刀斎に仕上げるよりもキャラクターの方をアレンジするか……ふむ、面白い、それならパクり元がわかりにくくなって一石二鳥かもしれない……いいでしょう、その手でいきます!ヴィヴィアン、あなたの得意な武器は?」

「得意武器?うーん、たぶん弓とか、素手で殴ったり、あー、ナイフも使った事あるかもしれない。なんとなくしか覚えてないけど」

「なるほど、ナイフなら、刀よりも扱いやすいですね……よし、それじゃあヴィヴィアンの役柄は伝説の人斬りジャック・ザ・リッパーにしましょう!」

「伝説の人斬り?」

ジャック・ザ・リッパー?」

ヴィヴィアンとサビーネはもう全くついていけない、マリーの独壇場だ。

「あなたは過去に政府の密命により大量殺人を犯していたアサシンですが、時代が変わり人の命を守る事に目覚め、二度と殺人はしないと心に誓った正義のアサシンです!このシーンでは敵の親玉との一騎打ちを演じてもらいます。重要なのはあなたは『今の自分の行いが正義だと信じている』ということですから、悪役の行動を否定しなければなりません、ここを良く覚えておけば多少台詞を間違えてもアドリブでなんとかなるはずです!」

「は、はい。がんばります!」

「それで、マリー、あなたはどうするんですか?あと残っている役は……」

「勿論!この役は!私がやります!」

さっきまで「役者なんて一度もやったことない」とか「無理ですよ!」って言ってたのに、この人はどうしてしまったんだろう。とヴァーナの二人は思っていたが火を点けてしまったのは自分たちの方である事も自覚していたのでそれ以上何も言えなかった。

 

 そういえばヴィヴィアンは昨日の昼に温泉に現れてから夜まで眠り続けていたのでまだそれほど眠くなっていなかったが、昨夜はマリーと眠らずに今日の朝までずっとおしゃべりをしていた事を思い出した。マリーは眠くないのだろうか?

実はマリーはとっくに徹夜の壁を越えておかしなテンションになっていたのだが、その事に気付くのはオーディションが終わった後のことだった。

 

 この後マリーは脚本を仕上げるため、キャラクター達をこの世界にもっと馴染み深い種族にしようとエルばあさんに話を聞きに行った。ヴィヴィアンとマリーもそれにつき合わされ、脚本の大まかなプロットが出来上がるとマリーはこれから執筆作業に入るというので、夕方からの宿の仕事はヴィヴィアンとサビーネが手伝う事になった。

 

 幸いと言っていいのか、いつも通り「風光明媚」は静かな営業で、マナーのいい静かな客が何組か来ただけだったので忙しくもなく、夕食後の後片付けを済ませるとサビーネはマリーに自分の役について詳しく確認し、一度自分の寮へと帰る事にした。明日はオーディションの前に自分の公演もあるのだ。オーディションの時間は明日の芸団の興行が終わってからになるのでおそらく夜、ちょうど今頃の時間になるだろうとの事。

サビーネは自分の公演が終わったらリハーサルを合わせに呼びに来るから、それまで話を仕上げたら宿できちんと休んでおいてほしいと伝えて寮へと帰った。

 

 ヴィヴィアンも温泉の掃除と宿の掃除を済ませると、マリーに自分の役柄についていくつか質問して、あとは作業の邪魔をしないように宿の脱衣場を使ってナイフを使ったイメージで自分なりにステップや振り付けを考えて稽古をしていた。

 

 エルばあさんもその様子を微笑ましく眺めながら、温泉宿「風光明媚」の夜は平和に過ぎていった。

 

 

 

 

 

アリアンロッドRPG 2E 「穿て 異界の門」外伝

異世界人ヴィヴィアンの旅路

ルネス編④「オーディション前夜」

 

 

▼つづく

*1:ルネスの温泉では公序良俗を守るために入浴用の肌着、または水着の着用が義務付けられている。一部全裸での入浴が可能な温泉もあるが原則的には「風光明媚」でも同様。

*2:神殿から給付されたお金

*3:※個人差があります

*4:有角族

*5:※個人の感想です

*6:AR2Eのルール上はサムライ以外には刀の所持も装備もできないので、演出上持たせただけ。

ルネス編③「煌く焔の踊り子」

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▲のつづき▼

 

 

 神殿で調べた仕事の依頼リストから「ムーンスター芸団」の名前を見かけたヴィヴィアンとマリーは、サビーネの所属する劇場を訪ねてみることにした。時間的には昼食前の頃合いだったが、ムーンスター芸団劇場のある大テント周辺は客引きと観光客で賑わっていた。

「ルネスに来たならよっといで!ムーンスター芸団だよ!」

「曲芸踊り子猛獣使いに奇人変人なんでもござれ!驚きすぎて死なないように気をつけて!」

「ルネス名物、ルネスエッグはいらんかね~この街でしか買えないよ~1つ食べれば寿命が延びる貴重な卵だよ~」

ケバブ串焼きソーセージ、エールとミルクとジェラートもあるよ~」

 

 

「来てみればわかるかと思ったけど、この中からサビーネを見つけるの大変だね」

「踊り子さんとは言ってましたが、演者さんもたくさんいるし演目も色々あるんですね」

片や元いた異世界の記憶がないヴィヴィアン、片や漫画やゲームなどのオタク文化ばかりが中心で本物のサーカスという物に触れてこなかったマリーにとって、異世界で初めて触れる刺激の強い娯楽施設だった。

 

 活気に気圧されてどのテントに行けばいいのかわからないまま立ち尽くしていると、呼び込みらしきネヴァーフの男に声をかけられた。

「お嬢さん達、ルネスは初めてかい?今ならうちの花形ダンサーサビーネのベリーダンスが見られるよ!男は勿論、女の子にも人気のショーなんだ、どうだい?今から見るなら安くしとくよ?」

「えっ?サビーネ?ちょうど今踊ってるんだ?良かった!せっかくだから見ていこうよ!」

「丁度良かった、私達サビーネさんに会いに来たんです。二人分、入れてもらえますか?」

「なんでぇ、サビーネの知り合いか。それじゃあ本当に安く入れてやらなきゃ怒られちまうな、今ならまだ始まったばかりだから、あっちの入り口から入りな」

口ぶりからするとおそらく観光客相手に入場料をボったくる手口だったのだろうが、サビーネの知り合いだとわかると苦笑しながらぶっきらぼうな口調になった。こっちがこの人の素なんだろうなと二人は思った。

 

 案内された入り口で入場料を払って天幕をくぐると、大きな円形劇場の中心では三人の露出度の高い衣装を着た女性ダンサーがスポットライトを浴びて妖艶に激しく踊っている。すり鉢形の底の舞台を囲むように階段状の客席が広がり、踊り子達をより近くで見ようと男達が舞台の近くの席でひしめきあっていた。観客席中段には興奮した男性客との揉め事を避ける為に女性客専用エリアが設けられていて、ヴィヴィアン達が入ってきた上段エリアには遅れて入ってきた客や揉め事を起こした客を摘み出す役割の男達が控えていた。

舞台上にはサビーネの他に二人のダンサーの姿と、スポットライトが当たらない位置には太鼓奏者、弦楽器奏者、管楽器奏者がそれぞれ演奏を奏でていた。

 

「どうせならもっと近くで見ようよ。ほらあそこの女性客エリア、まだ座れそうだよ」

ヴィヴィアンは目ざとく空いている席を見つけると、人混みをかき分けて進みだした。

「あっ、ヴィヴィアン、置いていかないでっ、すいませ~ん、と、通りま~す」

ヴィヴィアンより大柄なマリーは何度か人とぶつかりながら女性客エリアに辿り着いた。

 

 客席で動く姿があると舞台からは意外とよく見えるもので、サビーネは今入ってきたばかりの二人組の客が女性客エリアに辿り着くのを視界の端で捉えていた。

(あの二人……あっ、マリーとヴィヴィアン?わたしの舞台を見にきてくれたんですね)

すぐに二人に気付いたサビーネは振り付けの流れで女性客エリアの方へアピールし、二人に向けて投げキッスを送った。

 

 するとヴィヴィアン達よりも周囲の女性客から「キャ~!サビーネ様~!!」と黄色い声援が上がり、女性客同士で「今の投げキッスは私にくれたのよ」「絶対アタシ!」「もう一回!もう一回!」と盛り上がってしまったのでヴィヴィアンとマリーはサビーネが自分達に気付いたのではなく女性客へのファンサービスなのだと受け取っていた。

 

「サビーネさん、すごい人気ですね」

「さすが花形ダンサーだね。一緒に踊ってるお姉さん達も綺麗だけど、キラキラが段違いだ」

ヴィヴィアンの体に刻まれた「踊り子」としての記憶と「吟遊詩人」としての記憶がこの舞台を通して呼び起こされていた。

 

 

 およそ30分後、三人の女性ダンサーによるショーが終わると拍手と共に前の席でひしめきあっていた男達が一斉に移動しだした。円形の舞台では次の出し物の為にセットを組みなおし、先ほどまでいた演奏者達と次の演奏者が交代したりしていた。

「サビーネの出番これで終わりかな?今なら会えるんじゃない?」

「そうですね、次の演目に切り替わるみたいです。テントの外に行ってみましょうか」

 

 二人も外に出る客の流れに乗って一緒にテントを出ていくと、先に外に出ていた男性客と数名の女性客が何やら列を成してテントの裏側の方へと並んでいた。ヴィヴィアン達もサビーネが出てくるなら裏側かと思い列についていくと、これはダンサーの出待ちの列である事がわかった。

 

「サビーネ!今夜は俺と飲みに行ってくれよ!」

「レイチェル~!今日も綺麗だったよ~!」

「サビーネ様~!これ受け取ってください~」

「サビーネちゃん、輝いてたよ~!」

「カトリーヌ!俺だ!結婚してくれ~!」

 

 出待ちのファン達は思い思いの言葉を叫びアピールして、出てきた踊り子達は笑顔を返したり手を振ったり握手して交流していた。しかしサビーネだけは先ほどのショーで見せた顔とは別人のように笑顔を見せず、淡々とファンの相手をして言葉少なに「また来てください」「はい、どうも」と返しているだけだったので、ヴィヴィアンとマリーは親切で愛想のいいあのサビーネと同一人物かどうか不安になってしまった。

 

「あれ、サビーネだよね?疲れちゃったのかな?」

「どうしたんでしょう?私達来ちゃいけなかったんですかね」

不安そうに列に並んでいると、サビーネが二人の所までやってきた。

「向こうに寮があるから、あっちで」

それだけ伝えるとサビーネは他のダンサーと共にテントをぐるっと回ってファン達を撒きつつ「寮」に歩いていった。

 

 何か怒らせてしまったのかと思いながら、言われた通り二人は大テントの裏手の方にいくつかある生活感のある小テント小屋の方へとやってきた。

「寮」との言葉通り、こちらは主に舞台裏となっているようで、様々な芸人、猛獣と調教師、小道具や大道具が置かれていて「お客様はご遠慮ください」と注意されてしまいそうなエリアになっていた。

 案の定二人の姿を見たヒューリンの芸人に「ここはお客さんの来るところじゃないよ」と注意されてしまったが、「サビーネにここに来るように言われたんですが」と伝えると、「へえ、サビーネが?珍しい事もあるんだね、ちょっと待ってなよ」と二人を待たせてサビーネを呼びに行ってくれた。

 

「お待たせしました。わたしのテントへどうぞ」

 二人を迎えにきたサビーネはやはり無表情で最低限の言葉しか発しなかったが、特に怒っているような様子ではなかったので案内されるまま彼女のテントに入っていった。するとテントへ入った途端サビーネの態度が急変し、

「二人とも、わたしの踊りを見に来てくれたんですか?ありがとう!」

と、昨日と同じような笑顔と優しい話し方をしてくれたので二人もやっと安心して話をする事ができた。

 

「よ、良かった~。なんか邪魔しちゃったのかと思ってびくびくしちゃった」

「私達、ご迷惑かけてしまいましたか?大丈夫でしたか?」

「……? あ、ああ!そうか、ごめんなさい、驚かせちゃいましたね」

サビーネは自分の態度の変化が二人を困惑させていたことにここで初めて気が付いた。

「わたし、ステージ上ではお客さんに笑顔を振りまくのを忘れないようにしてるんですけど、踊ってない時はどうも緊張しちゃって表情作れないし喋り方も無愛想だってよく言われるんです」*1

そのギャップも含め彼女のファンには好評だったりするのだがそれについてはサビーネ本人は気付いていない。

「エルばあさんの温泉宿ではリラックスできるので、あそこで会ったあなた達にはこうして打ち解けられるようになったんですが、未だに他人の目がある場所だとどうも緊張してしまって……ごめんなさい」

「なーんだ」

「そうだったんですか」

「ところで今日は二人ともどうしてここに?本当にわたしの踊りを見に来てくれただけですか?エルばあさんは?」

 

 二人はエルばあさんから長めの休憩時間をもらった事と、ヴィヴィアンが神殿で冒険者登録してきたこと、二人ともエルばあさんの温泉宿以外でも仕事を見つけて少しでも宿代を払えるようにしたいのでこの町での仕事の依頼を見ていたらサビーネのいるこの芸団の募集を見たので来てみたことを説明した。

 

「確かにエルばあさんの宿、あ、風光明媚って言うんですね、わたしも名前知りませんでした。あそこは人手不足になるほどお客さん来ませんからね。わたしも穴場で落ち着くから気に入ってるぐらいですし。ということはヴィヴィアンの事をマリーにお任せしてしまったわたしにも責任がありますね」

「いや、責任という程のことでは……元はと言えばあたしが突然温泉に降ってきちゃったのが原因なんだし」

「エルばあさんからは何も言われてないので、私達が自主的に働こうと思っただけなんです」

「いえ、お二人の考えはわかりました、わたしにも協力させてください。二人ともこの芸団の募集を見てきたんですよね?何か自信のある特技や一芸があるってことですか?」

「自信のある、とまでは言えないかもだけど、たぶんあたし歌とか踊りとか、楽器の演奏なら少しはできるかも。サビーネほど上手にはできないかもしれないけど……」

「私は、強いて言うなら絵を描くのが得意なんですが……こちらでお役に立てる事はないかもしれないです。あ、力仕事なら大丈夫かも!」

「あ、マリーはお話が上手だよ。異世界のサムライの話とかたくさん知っててとっても面白く話してくれるの。弾き語り風にして人に話すとうけるんじゃないかなあ?」

「ふむふむ、なるほど……」

サビーネは二人の特技の説明を聞き、少し考えるとこう言った。

 

「では二人ともこれからわたしと団長代理に挨拶に行きましょう。うちのオーナーのミラルナさんは今出張中で、団長も別の街に出張しているので、団長代理のジョセフさんがオーディション担当なんです。今日のところはまだ忙しいので時間が作れませんが、明日にはオーディションの時間を作れるはずですから、ここで仕事するかどうかはその時に合否をもらうという事でどうでしょうか?」

「オーディションかあ」

ヴィヴィアンはなんだかわくわくしていて、

「お、オーディション、緊張しますね」

マリーは団長代理に挨拶をする前から固くなっていた。

「大丈夫ですよ。確かにこのムーンスター芸団は素人が簡単に立てる舞台ではないですが、二人からは何か面白い才能を感じます。わたしの踊り子としての直感が囁いています」

 

 

 3人は露天が集まって観光客と客引きでごった返す大テントの正面へと戻ってきた。

花形スターのサビーネがお客さんに見つかると騒ぎになるのではないかと思ったが、多少声をかけられたり握手を求められる事はあっても心配するほどの大騒ぎにはならなかった。

「ジョセフさん」

サビーネは人混みの中から先ほどヴィヴィアン達に声をかけてきた客引きのネヴァーフを見つけて声をかけた。

「あ、さっきのおじさん」

「この方が団長代理の?」

「お、なんでぇサビーネとさっきの姉ちゃん達か。なんだよこの姉ちゃん達からはボったくってねぇぞ」

ジョセフは他の客に聞かれないように悪態を付くと人混みから少し離れた場所に移動し煙草に火を付けた。

「どうしたんだよ、今日は温泉巡りしねーのかい?」

「ええ、この後行くつもりです。ジョセフさん、明日この二人のオーディションをしてください」

このジョセフの前でも緊張しているのかサビーネは無表情で必要最低限の伝達事項を唐突に切り出した。

「あぁ?オーディション?またお前は突然何を……ああ、そうかい、その姉ちゃん達は芸人だったのか。ダンサーかい?ジャグラーかい?ピエロ?テイマーか?それともコメディエンヌか?」

「えーっと、芸人というわけでは……」

「あの、アルバイトをさせていただけたら……」

ヴィヴィアンとマリーは遠慮がちに口を挟んだ。自分達の食い扶持の問題なのだから自分達で話をしなくては。

「んん?芸人じゃねえのか?じゃあ一体何のオーディションをやれっていうんだ?」

 

 ヴィヴィアンとマリーは今の自分達の生活の状況を説明し、サビーネに会いに来たらオーディションを受けるように薦められたとジョセフに話した。

「……ほぉ~。サビーネが薦めたのか」

サビーネは黙って頷いた。

「……面白ぇじゃねえか。なあ姉ちゃん達、よそもんのあんた達は良く知らねーだろうが、このサビーネはムーンスター芸団きっての花形ダンサーなんだ。はっきり言ってそこらの新米冒険者のダンサーとは格が違う。そんなサビーネが推薦するなんてことは、よっぽど面白い見世物をやってくれるって事だと期待しても、いいんだよな?」

ジョセフは煙草の煙をふかしながらニヤリと笑みを浮かべてヴィヴィアンとマリーを舐めるように睨み付けた。

 

「え、えぇ~~……?」

「ハードル上がりすぎてるんですけど……」

なんだか話が大きくなってしまった事に尻込みしているヴィヴィアンとマリーを無視して、サビーネは力強く頷いた。

「大丈夫、わたしが保証します」

 

 

 とんでもない期待をかけられたままオーディションの約束を取り付けたヴィヴィアン達は演目を終えたサビーネと共に、エルばあさんの様子を見に行く事も兼ねて温泉宿「風光明媚」の温泉に入りに行くことにした。

 

 

 

 

アリアンロッドRPG 2E 「穿て 異界の門」外伝

異世界人ヴィヴィアンの旅路

ルネス編③「煌く焔の踊り子」

 

 

▼つづく

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*1:西方ガイドのキャラ紹介の性格と整合性を保ちたかった

ルネス編②「もう一人の異世界人」

 

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▲のつづき▼

 

 

 日本という国のとある都市、央海大学が突如として消えてしまってから1年、その騒ぎは未だ醒めやらなかったが、央海大学卒業生である三澄麻里の生活には、初めのうちこそ驚きはあれどそれほど大きな影響は現れなかった。


 大学在学中にデバッカーのアルバイトをしていたゲーム会社にそのまま就職し、グラフィックデザインの仕事を任されるようになっていた麻里にとって、母校が突然なくなった事のデメリットは学校の図書館という「資料室」が使えないという事ぐらい。


その日も朝8時まで残業をし、ようやく仕事を終えた麻里は久々の連休を満喫する為、帰宅前にコンビニへ寄り道して弁当、サンドイッチ、お菓子、栄養ドリンク等を大量に購入した。


 仕事が終わってようやく休める……訳ではなく、麻里にはこれから趣味の同人誌作りの追い込み作業が待っていた。

 麻里が子供の頃に熱中していた少年漫画、その作品の主人公のライバルである角を生やした魔王*1に心底惚れこみ、個人サイトやSNSを巡回を続けているうちにどうやら自分がいる沼は既にマイナージャンルである事に気が付いた。


 供給がないのなら自ら需要になればいいのだと覚醒した麻里はそれから休みがあればイラストを描き続け、いつしかその創作意欲は同人誌を作り出すレベルにまで昇華した。

「週末……週末までに描き上げないと……!眠ってる暇なんかないんだから……!」

頭痛薬とコーヒーと栄養ドリンクを独自に配合した特製ドリンクを流し込み、鬼気迫る勢いで原稿に向かっていた麻里はラストスパートを迎えていた。

──人生のラストスパートを。

 

 最初に異変に気付いたのは麻里と共に音声チャットで同人作業をしていた近所に住む友人だった。
麻里の作業音もなければ声をかけても返事がないので、寝落ちしてしまったのかと思い、「寝落ちしてたらどんな事をしてでも起こしてくれ」との「遺言」通り、彼女の家を訪ねて合鍵を使ってドアを開けた。
部屋に入って机で「落ちて」いた麻里の様子に気付いてから救急車を手配したのだが、時既に時間切れ。*2

 過労と睡眠不足と栄養バランスの悪化、そして短期間に大量のカフェインを過剰に摂取した麻里は、そのまま机に倒れて死んでいた。
享年33歳。彼女の遺作となった同人誌はその友人が責任を持って引き取ったという────

 

 

 

 


 エリディル大陸西方、とある山奥の森林地帯、突如一夜にして出現した巨大な建造物を隠すように外壁に囲まれた都市。
都市の名は「大学都市オーカー」と名付けられた。

初めのうちこそ「異世界から現れた建物」として警戒され、"聖都"ディアスロンドに認められた後も一般人の混乱を避けるために都市の外に情報を漏らさないよう気をつけられていたが、今ではその規律を厳格に守る人も半分程になり、異世界アーシアンの情報は良くも悪くも大学都市の外に知れ渡るようになった。

 

 オーカーの敷地外の森林で目を覚ました麻里は、体の違和感と共に周囲の状況を把握できずにいた。
「え、森……?どこここ……?え、あれって……?なくなったんじゃ……?」
央海大学改め大学都市オーカーを見つけた麻里は、自分は夢を見ているのかと半信半疑のまま自分の「母校」へ吸い込まれるように歩いていった。

 

それからの流れは驚く程スムーズだった。

 門番に「この都市へ来た目的」「名前」を尋ねられ、「卒業生の三澄麻里です」と名乗った途端、何やら慌しく連絡をしたかと思うと、大学の中へと案内された。
案内された教室で待っていた数名の生徒に質問され、答えていくうちに麻里は自分がこの世界に転生してドゥアンという種族になっていた事を知った。
一人の生徒によれば「現代日本で央海大学と縁のあった人物が何らかの形で死亡したり事故に遭うと、転生後にここに呼ばれるのでは」との事だった。

 

 オーカーでは突然の異世界に戸惑う地球人や元地球人の為にカウンセリングも実施されていたが、学校側の心配をよそに意外にも「新世界」「二度目の人生」「アニメやラノベの世界」と楽しむ人物も多かった。


 麻里はと言えば、自分がドゥアンという角の生えた大柄な種族に転生していた事に気付いてからは一気に気持ちが前向きになり、「異世界で魔王鬼丸を見つけてお嫁さんに……!」と欲望全開でこの世界を楽しむ事にした。

 

 しかし例え以前の自分より遥かに大柄で強そうな異世界の種族に転生したとしても中身は三澄麻里33歳独身。
中学高校と剣道部の経験はあれど、基本は少年漫画が好きで平和ボケした日本人の女オタクにいきなり「冒険者」というのもハードルが高すぎるもの。
そこで麻里は大学側で用意された冒険者育成チュートリアルシステムを活用し、最低限一人でも冒険者として生活できるように知識と実技を覚えた。


 そして武者修行という名の自称「魔王の花嫁修業」を開始した麻里は、おっかなびっくり大学都市オーカーから南下して温泉街ルネスへ辿り着いたのだった。

 

 

 


「……で、新撰組ってギルドは幕末の京都で壬生狼って恐れられてる人斬りサムライ集団で、ギルドの中でも厳しい掟がたくさんあって、掟破りは切腹しなきゃいけないんです」
ミブロ……ミブとは町の名前を意味し、ロとはアーシアン語で「オオカミ」の別名、つまりミブ町の狼族ということなのだろう。自分の腹を切らせるとはなんとも残虐な掟である。

 

 マリーから「異世界から来た学校」の話を聞き始めるうちに話はどんどん脱線し、いつのまにかヴィヴィアンはマリーから現代地球の(非常に偏った)文化を教わっていた。*3


 マリー自身は自分がアーシアン三澄麻里であることを悪気があって隠すつもりはないのだが、オタクの端くれとして「異世界に馴染みたい」という願望から、なるべくこの世界に馴染むような「設定」を自分なりに考えて話していた。


 大学都市オーカーの成り立ちやそこに現れた転生者の話も「知り合いに聞いた」という体でヴィヴィアンに説明したが、客観的に聞いてみれば非常に無理があるバレバレな嘘にしか聴こえない。

 

 しかしこの時のヴィヴィアンは鈍感だったのか意図的だったのか*4、偶然にもマリーの小さなくだらない嘘に気付かず、
「それにしてもマリーって話上手だね。まるで自分で見てきたみたいに聞こえるからすごく臨場感あるよ~」
「えっ、あ、そ、そうですかね!あは、あはははは」
「吟遊詩人にも向いてるんじゃない?あたしも参考にしてみようかな~」
と、深く追求しなかったので、このお話の中でヴィヴィアンはマリーがアーシアンであることを知らないまま進む。

 

そして一通り話を聞いていたヴィヴィアンは、マリーの話に出てくる「現代地球」「日本」「アーシアン」というのはどれも自分の意識にひっかからない、違う異世界の話である事を感じていた。

 

 

 

 結局その晩は夜通し朝まで話し続け、ヴィヴィアンとマリーは無駄にハイテンションなまま早朝の風呂掃除と朝食作り、客室のベッドメイキングを行なった。

 

「二人とも、昨夜は遅くまでおしゃべりしてて寝てないんだろ?今日は予約してるお客さんもいないし暇そうだから、お昼寝しててもいいよ」

仕事の後食堂で朝食を食べているとエルばあさんからそんな言葉をかけてもらえた。

 

「ごめんなさい、うるさかったですか?」

「すいません、つい止まらなくなっちゃって」

「夜遅くまで話し声が聞こえてうるさかった」という意味かと思い、マリーとヴィヴィアンは咄嗟に謝ったがエルばあさんは素直に二人を労っていた。

「いいんだよいいんだよ、若い女の子のおしゃべりなんて子守唄みたいなもんさ、他のお客さんからも何も苦情は出なかったしね。いいから今日はゆっくり休んで好きな事しておいで。元々この宿はそう忙しくないんだ」

 

 実際ルネス東区のはずれにあるこの宿はそれほど目立つ立地でもなければ特別いい温泉という訳でもなく(そもそもこのルネスには"百湯"と呼ばれるほど温泉があるのだ)、基本的にはエルばあさん一人でも十分営業可能な小さな温泉宿だ。

ただ地域の住人もエルばあさん本人も含め知っている事だが、彼女には持病がある為もしもの時一人きりだと危ないので、近くの別の温泉宿から手が空いた従業員を手伝いに回したり地域の住人が見回りで覗いてくれることがよくあった。

 そんな折昨日のような事件があり、思わぬ所から従業員が二人も確保できてしまったのでむしろ人手が足りないどころか溢れてしまっているような状況なのだと二人もやんわりと気付き始めた。

 

「わかりました、それではお言葉に甘えて今日はお休みさせていただきます」

「あたしはまだちょっとしか働いてないけど、暇ならごろごろしてようかな~」

「うんうん、ゆっくりしておいで。もしかしたら夕方からお客さんが見えるかもしれないから、出かけるならそれまでに戻ってくれると助かるよ」

「わかりました」

「は~い」

 

二人は食堂を片付けた後エルばあさんとお茶をして少しこの街の事を教えてもらい、街の中を観光してみることにした。

 

「さて、それではヴィヴィアンさん」

「ねぇねぇ、ヴィヴィアンでいいよ。マリーの方が年上なんでしょ?」

「それもそうですね。じゃあヴィヴィアン、まずは冒険者の基本として神殿に行ってみましょうか」

「はーい、それよりあたしこそマリーのこと呼び捨てにしちゃってるけどいいのかな?……いいですか?」

「あ、全然お気遣いなく!私は構いませんので!」

「よかった~」

 

 まずはヴィヴィアンを神殿に連れて行き、冒険者として登録する事にした。

いくらエルばあさんの好意で宿に住み込ませてもらえてるとは言え、お世辞にも繁盛しているようには見えない。このままでは彼女に負担ばかりかけてしまうと考えた二人は、せめて食事代ぐらいは神殿から冒険者に支給される給付金をもらってエルばあさんに受け取ってもらおうと考えたのだ。

 

「ようこそルネスの神殿へ。ご用件はなんでしょうか」

「はい、こちらのヴァーナの女性、異世界人らしいので、まずは冒険者登録をお願いしたいんです」

異世界人……アーシアンの方でよろしいですか?」

「あ、いえ、アーシアンは私……いや、そうじゃなくて、どうも彼女はアーシアンじゃないっぽいんです。記憶喪失みたいなんですけど」

神殿受付の神官とマリーの会話を聞いてるうちにヴィヴィアンは自分が話した方が早いと思ってマリーと交代した。

「えっと、この世界の事まだあんまり知らないんですけど、昨日初めてこの世界に来たばっかりなんで、とりあえず冒険者登録してもらっていいですか?種族はヴァーナです。元の世界ではミコッテって種族なんですけど、ヴァーナでいいです」

「なるほど、記憶喪失……のヴァーナで、アウリクの方ですね、わかりました。ではもしも後日記憶が戻られて、アーシアンだとわかった場合改めて手続き変更に訪れてください。続けて、書ける所だけで構いませんのでこちらの書類に、お名前と、職業と、今住んでいる場所と、持ち込み武器類、ギルド名や緊急連絡先などを……」

「はーい。なになに?えーっと……」

ヴィヴィアンは書かれた用紙を見ながらわからない所はマリーに質問しつつ埋めていった。

 

 どうやらこのルネスはエリディル大陸でも特殊な街で、温泉の妖精と契約した事により外部の人間が武器を持ち込む事を禁じられているという話をエルばあさんからも聞いていた。

 元々この街に住む人間と、神殿が許可した冒険者に限り武器を携帯してもいいとの事で、この場合ヴィヴィアンはルネスに出現した事で特例でルネス住人として認めてもらえるのと、更に今回冒険者登録をすることで合法的に武器を携帯しても良い事となった。ただし携帯が許可されても抜刀が許可された訳ではない。

 この街で揉め事を起こさないと認められた者が武器の携帯を許可され、携帯を許可された上で揉め事を起こせば神殿から正式に冒険者登録を剥奪されるという事をくれぐれも忘れないようにと念押しされた。

 

「まあ携帯も持ち込みも、そもそも今あたし武器どころかなーんにもないんだけどね」

 ヴィヴィアンは自分が現れた時衣服も何も身に着けていなかったという話を思い出した。正直今の自分の「ジョブ」がこの世界では何に当てはまるのか検討もつかない。マリーと相談しながら自分の記憶にひっかかるクラスのうち、「モンク」「バード」「ダンサー」を挙げて、モンクは取り消してバードとダンサーにチェックした。メインクラスは消去法でシーフを選択した。

「ギルド名、は無し、と。住んでる場所、と緊急連絡先、は……えーっと、エルばあさんの宿ってなんて名前だっけ?」

「あ、そういえば、名前ちゃんと見てませんでした、看板が出てたんですが文字が掠れてて」

「書ける所だけって言われたから書かなくてもいいのかな」

「そうですね、飛ばしちゃっていいんじゃないですか?」

 

そう会話していると、近くで話を聞いていた神官が横から口を挟んだ。

「失礼、お嬢さん方、エルばあさんと言ったかな?東区の"あの"エルばあさん?」

「はい、多分"その"エルばあさんです。小さいけど綺麗な温泉がある、小さな宿の、持病のあるエルばあさんです」

マリーが詳しく補足した。

「そうかそうか、エルばあさん、まだご存命か。では君達は風光明媚に泊まっているんだね」

「風光明媚?」

フーコーメイビー?」

「あの宿の名前だよ。何度か名前が変わっているけどね、確か僕の知っている一番最近の名前は"風光明媚"だ」

 

そう説明した神官は「エルばあさんのお客さんなら信用できる。緊急連絡先はエルばあさんで大丈夫だよ」と受付の若い神官に口添えしてくれた。

「エルばあさん、ですか?お名前は"エル"さんでよろしいのでしょうか」

「いや、エルダナーンのおばあさんだからエルばあさんだ。東区のエルばあさんと言えばあの人しかいないからそれで問題ない」

「本名じゃなくていいんですか?ちゃんと審査通りますかね?」

「大丈夫大丈夫、ここで昔から働いてる神官はみんな知ってるんだ、昔は本名を知ってる人もいたんだけどね、もう退職しちゃったり別の街の神殿に移っちゃってるからここで知ってる人はほとんどいない。心配ないよ、僕が責任を取るし、それに元々その項目書いても書かなくても審査には問題ないんだから」

 

受付の若い女性神官と、恐らく位の高い男性神官のやり取りを聞きながら、マリーとヴィヴィアンは呆気に取られていた。

「エルばあさん、有名人なんですね」

「そんなに適当な書類なら書かなくてもいいのでは……?」

 

「ああいや、ごめんなさい!今の話は内緒。忘れてください!」

性神官は苦笑しながらヴィヴィアンに向き直った。

「この登録の書類の中身にあまり意味はないのは本当なんだけどね、それを言ってしまうとみんな真面目に書かなくなってしまうから」

「でもそれじゃあ何のためにこんな審査があるんですか?」

「ここだけの話にしておくれよ?これは書類の中身そのものに意味があるんじゃなくて、冒険者本人が直筆で書類を記入する事に意味があるんだ。そうすることで神殿に正式に受理され、神の奇跡が書類を書いた本人に付与されることになる」

「へ~、でもそれなら尚更真面目に書かなくていいですよね?ミミズの落書きでもいいんじゃないの?」

「確かにそうなんだが、考えてもみたまえ、書類を真面目に書く冒険者と、嘘を書いたり真面目に書かない冒険者、どちらが信用に値すると思うかな?」

「……なるほど」

「だろう?だからこの話は内緒にしておいてほしいのさ」

「……でもやっぱり不思議、真面目に書かない人が信用できないなら、信用できない人は登録しなければいいんじゃないの?それっておかしくない?」

「ふふ、君は中々鋭いね。"素質"があるかもしれないな」

素質?何の素質だろうと思ったが一旦聞き流した。

「嘘の情報を書いたり真面目に書かなかった冒険者まで何故神殿で登録できてしまうのか。それはね、神殿の上の組織が」*5

 

エドモン神官!いつまで油を売っているのですか!」

背後からまた別の神官が現れて男性─エドモン神官─を叱責したので、話はそこで終わってしまった。

「ごめん!ついつい喋りすぎちゃったけど、今の話はくれぐれも聞かなかった事にしてね!」

「またあなたは冒険者に余計な情報を与えて……!」

 

体格のいい神官に引きずられて何やら小言を食らいながらエドモン神官は去っていった。

 

「なんだったんでしょうか」

「さあ?なんか聞いちゃいけないような事聞いちゃった気がする」

 

 少し待つとヴィヴィアンの冒険者登録は正式に受理され、支度金として少量の金額が給付された。他に、他所の街の神殿も含め、どうしても所持金がない場合は神殿で寝泊りさせてくれたり質素だが食事も配給してもらえる事を教えてもらった。

「でもそれもどうしてもお金がない時、例えば仕事をしたいけど近くでできる仕事がないとか、自分のレベルに見合った依頼がないとか、怪我や病気で動けない時のためですから、基本的に冒険者の方は依頼を受けて依頼者の方にお給金をいただいてくださいね」

「はーい」

 

 早速ヴィヴィアンはマリーと一緒にこの街で受けられる依頼をいくつか見てみた。

さすが平和な温泉街だけあって冒険者への依頼も危険性がないものがほとんどだった。

 

『温泉従業員募集!住み込み可、賄い有、給与応相談』

『求む!自警団員!腕に覚えがある冒険者、自警団に入らないか?給与は少ないけどやりがいあります!街の平和をみんなで守ろう!』

『街の外のモンスターを退治してください』

『聖都ディアスロンドまでの護衛求む』

『ダンサー、バード、その他一芸に秀でた冒険者募集中!寮有り!君もこの街でスターになろう!詳しくはムーンスター芸団まで!』

 

「あ、これって」

ムーンスター芸団。サビーネさんの所ですね」

 

二人は次にサビーネに会いに行く事にした。

 

 

 

アリアンロッドRPG 2E 「穿て 異界の門」外伝

異世界人ヴィヴィアンの旅路

ルネス編②「もう一人の異世界人」

 

 

▼つづく

 

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※おまけ

この外伝シナリオ中に使うかわかんないけどマリーのキャラメイク一応考えてたのでここに記載。

マリー LV3
現代地球に嫌気がさしていたら異世界転生してしまったオタク女子
本名三澄麻里 33歳 死因は過労+カフェイン過剰摂取などによる急性心不全
中学高校時代剣道部 央海大学卒業生

種族:
アーシアン:転生
ドゥアン:セラトス(有角族)

メインクラス:

ウォーリア
ブランディッシュLv1 メジャー 両手で武器を持って範囲攻撃*6
ボルテクスアタックLv1 シナリオ1回スキル
ボディビルディングLv1 パッシブ

サポートクラス:
サムライ
ケンドーLv1 パッシブ クリティカルダイス追加+2D
ハガクレLv1 パッシブ HP減少時ダメージダイス追加+1D

アームズマスタリー刀Lv1 パッシブ 刀使用時命中+1D
スピリットオブサムライLv1 アイテム 刀をSL個取得
ソニックブームLv1 メジャー 遠隔白兵攻撃*7

ファーストストライクLv1 セットアップ
パワーブレイクLv1 マイナー
グランススラッシュLv1 DRの直前

一般スキル
サブカルチャー:現代地球 パッシブ オタク
カルチャー:大学都市オーカー パッシブ

アニマルエンパシー パッシブ
アニマルコントロール メジャー*8

 

 

*1:剣勇伝説YAIBA

*2:もう勝負ついてるから

*3:「アースノウリッジ」取得用フラグ

*4:判定でファンブルしたのか

*5:「チェイサー」取得用フラグ

*6:最初のうちはキャーキャー振り回すイメージ

*7:「魔王横一文字」って決めながら普通の横一文字(とはいえヤイバ世界でも5~6メートルは真空斬りできる)をやりたい

*8:実家で大型犬や猫や亀を飼ってたとかそんな理由

ルネス編①「異世界からきた猫娘」

crimsondarkness.hatenablog.jp

▲のつづき▼

 

 

「ふぅ~、極楽極楽……」

 ルネス東区に劇場を構えるムーンスター芸団に雇われているアウリル*1のサビーネは芸団きっての花形ベリーダンサーだ。
劇場で数時間踊った後にはその日の気分によって毎日温泉を変えて楽しむのが彼女の日課だった。

ここ温泉の街ルネスは老若男女種族も身分も関係なく全ての人に等しく温泉が開かれている、エリディル大陸最大の保養地とも名高い平和な街だ。*2
泉温、泉質、涌出形式などの区分が80種を超える数多くの温泉を有する"百湯"と歌われる温泉郷だけあって、入る温泉を毎日変えても飽きる事がないという。
たかだか数日~数週間の滞在が主な観光客と違い、ルネス住人ともなればその温泉の楽しみ方は多種多様だ。

 

 サビーネが「今日の昼風呂」に選んだのは東区のはずれにある、小さいが掃除の行き届いた綺麗な温泉だった。
ここを管理している温泉宿の女主人と従業員がこまめに掃除をしてくれているおかげだ。
サビーネはこの温泉の清潔さと、女主人の心配りが気に入っていた。
東区の温泉は温泉の妖精によって導かれた地下の海水が熱水と混合した"化石水型"温泉、別名「食塩泉」とも呼ばれ、殺菌力が強く、鎮静効果もあるため、傷の療養に訪れる者が多い。
この小さな温泉にも傷を癒しにきたであろう屈強なドゥアンの女性の姿が見られた。

「さて、軽くランチにして午後の演目のリハーサルをしておこうかな」
サビーネが湯船を上がり、脱衣場に戻ろうとした時だった。

『ザッバーーン!』

背後の温泉に「何かが飛び込む音」が聴こえた。
全く、温泉に入るマナーがなっていない浮かれた観光客だなと呆れ、脱衣場の扉を閉めた時にふと思い出した。
……さっき私以外に湯船に入っていたのはあのドゥアンの女性だけのはず。
人は見かけによらずとは言うが、まさかあの落ち着いた女性がそんな無作法な真似をするだろうか?

そう脳裏によぎったのと浴場から叫び声が聴こえたのはほとんど同時だった。

「誰か!誰か来て!し、死んでる!!」

穏やかではない叫び声にサビーネも慌てて浴場へ踵を返した。

「一体どうしました?!」

見ると、入浴用の肌着を身に着けていない全裸の女性が、うつ伏せのまま温泉にぷかぷかと浮かんでいた。
ドゥアンの女性はそれを見て腰を抜かしたのかのように湯船を上がった岩場でへたりこんでいた。

「さ、さっき水音がしたから振り向いたら、あの人が浮かんでて、全く動かないの……」

ドゥアンの女性は見かけによらず気が弱いようで、瞳には涙すら浮かべている。
サビーネは湯船に入り、そこに浮かんでいる女性を裏返した。
裏返す前にまず目にしたのは彼女の臀部から生えた桃色の尻尾、そして裏返して改めて確認したのは彼女の桃色の髪と頭に生えている猫のような耳。
アウリク*3、サビーネとは少し違うが、大きく分ければ同じヴァーナ族だ。
そしてよく観察してみれば彼女は……

「寝てる……」

呼吸はしていた。胸も動いている。
どういうわけか知らないがこの女性は眠ったまま温泉に飛び込み(?)そのまま眠り続けているようだ。

「お姉さん大丈夫です。この人死んでません。眠ってるんです」

なんとも人騒がせな珍客だ。

サビーネは「この後の興行もあるし、あとはこのドゥアンの女性に任せて帰ってしまおうか」とも思ったが、この温泉宿の女主人の事が気になった。
あの人ならきっと心配してこの子(多分わたしより年下ね)のお世話をしてしまうに違いない。
あの人の体の事を考えるとあまり無理をさせたくないなと考え、仕方なくここに残る事にした。


 浴場でへたりこんだままのドゥアンの女性を説得し、まずはこの全裸のアウリクの女性を湯船から引っ張り上げてもらった。
さすがはドゥアン、軽々と彼女を抱え上げ、今度は見かけ通りの活躍を見せてくれた。

まずは彼女の濡れた髪をタオルで拭き、さらに渇いたタオルを頭に巻いた。
次に濡れた体を拭きとって、その体にもバスタオルを巻きつけた。
その間何度も声をかけ、頬を軽く叩いたりしたのだが、この女性は一切目を覚まさず小さな寝息を立てているだけだった。

「魔法や睡眠薬で眠らされているのかしら?」

少し心配になったが、とりあえず命に別状はないように見える。
一度このアウリクの女性を脱衣場の床に寝かせ、ドゥアンの女性と一緒にサビーネも自分の衣服に着替えた。
そして少し躊躇ったがそうするしかないと考え、脱衣場の外で何が起きたのかわからずおろおろしていた男性従業員に声をかけ、温泉宿の女主人を呼んでもらった。

「はいはいどうしましたサビーネちゃん……おや、このお客さんは?」

従業員に呼ばれて、年老いたエルダナーンの女主人がやってきた。

 

 彼女の名前は「エルばあさん」。実は誰も彼女の本名は知らない。
「エルダナーンのおばあさん」だから「エルばあさん」。
それだけでは他のエルダナーンの老婆と間違えてしまいそうだが、ここルネス東区では「エルばあさん」と言えばこの女主人の事だとわかるぐらいには地域に浸透し、またそれだけの人望があった。
彼女は年の割りに良く働き、困った人がいれば世話をやいてしまうという、親切なのは結構だが自分の身を省みないという欠点もあった。
年の割りにとは言ったが、彼女の本名と同じく、彼女の年齢を正確に知る者もいない。
そもそもエルダナーンの平均寿命は200歳程度である上、人によっては外見が全く老いない者もいるので、彼女の外見から年齢を計るというのも難しく余計に年齢不詳だった。
ある者は「150歳ぐらいだろう」と言い、またある者は「俺が子供の頃にはエルばあさんはもうエルばあさんだった」と言い、この地域ではエルばあさんと言えば本名不明年齢不詳の不思議なエルダナーンの老婆を指す事で有名だった。

「エルばあさん、この人知ってますか?実はさっき湯船に突然飛び込んできて……」

サビーネと、一緒に居合わせたドゥアンの女性─旅の冒険者で名前はマリーと名乗った─はこの眠り続けるアウリクの女性について見た事を全て説明した。

「あらあら、まあまあ……それは大変だったわね」

エルばあさんはそう答えると、ほんの少し考える素振りを見せ、そしてすぐに決断した。

「それじゃあマリーさん、申し訳ないけどあなたもう少しお手伝いしてちょうだいな。この子を2階の角の部屋まで運んでベッドに寝かせてちょうだい。もしあなたの泊まる宿がまだ決まっていないなら、彼女と一緒の角部屋でどうかしら?お仕事させちゃうお詫びに宿代はまけておくわ」

「えっ、そんな、いいんですか……?」
マリーは彼女を運ぶ事については全く拒まなかったが、宿を提供してもらえる事に気が引けているようだったので、サビーネが助け舟を出した。

「マリーさん、断らないって事は、まだ宿は決まってないんですね?ここはエルばあさんの言葉に甘えていいと思いますよ。その代わりここに滞在している間は、あなたの体力を使ってエルばあさんのお手伝いをしてあげてください。これはわたしからのお願いです」

エルばあさんについてはもう1つ地域の共通認識となっている噂があった。
彼女は長い間病気を患っていて、あまり無理ができる体ではないらしい。
エルばあさん本人もそれを隠すつもりはなく、周囲の人間も彼女の人柄を見込んで喜んで手を貸していた。

マリーもそういう事なら、と今度は遠慮なく仕事を引き受けた。

とりあえずアウリクの彼女は無事で、マリーのおかげでエルばあさんに無理をさせることも防げた。
サビーネの心配事はなくなったので、今からならランチを食べる時間はないけど午後のリハーサルに間に合うとムーンスター芸団劇場へ戻る事にした。
するとエルばあさんがサビーネに声をかけた。

「サビーネちゃん、これからまた公演でしょう?ごはんを食べる時間もないんじゃないかい?」
「大丈夫です!お腹が膨れちゃうとダンスに影響が出ますからね」
「まあまあ、若い子がそれじゃあいけないよ、ちょっと待ってなさい、今賄いの残り物で何か用意してあげるからね!」

そう言うとエルばあさんは小走りで厨房へと行ってしまった。こうなると止められないし断るのも忍びない。
サビーネは「ほらね?」という顔をアウリクの女性を抱えたマリーにしてみせた。
マリーも「なるほど」と苦笑をして返した。親切心はありがたいのだが、もっと自分の体を労ってもらいたいものだ。

エルばあさんは賄いの残り物でおにぎりを3つばかり作ってサビーネに渡して見送ると、アウリクの女性を抱えたマリーを2階の角部屋に案内した。

 

 

──その夜──

 

 

……なんだかあったかいお湯に浸かっていた気がする。

そういえば……寝る前に、お風呂、入ったっけ……?

う~ん……ごはん……食べたっけ……?

あれ……今、何曜日だっけ……ここ、どこだっけ……?

「あたし」……だれだっけ……?

 

目を覚ますと見知らぬ部屋にいた。

窓の外は暗く、もう夜なのはわかった。部屋にはランプが灯され視界ははっきりしていた。

外から時折陽気な声が聴こえてくるので、それほど深夜ではないのだろうか?

むくり、と起き上がって布団を外すと、自分が何も衣服を身に纏っていない事に気が付いた。

……あれ?なんだ?酔っ払ってなんかしちゃったか?

参ったな~、まさか自分が酔った勢いでそんなことするとは思ってもみなかったぞ。

どうしようかな~、何て言って断ろうか。

素直に酔っ払ってて覚えてませんで乗り切ろうかな。

いや待てよ、そもそも相手がどんな人か見てみないとな。

ボーっとした頭で考えていたが、枕元に衣服が畳んであることに気が付いた。

あたしの服……じゃないなこれ。

まあでも、ここに置いてあるってことは、これを着ていいってことだなきっと、うん。

違ったら謝ればいいやと思い、枕元にあった衣服に着替え始めた……すると、

『ガチャ』

部屋のドアが開いて、大柄な人影が部屋に入ってきた。

あ、やばいぞ、このパターンは予想してなかったな、こりゃ力じゃ勝てないぞ、うまい事誤魔化して逃げなくちゃ……。

 

一瞬の緊張感の中、固まって考えていると、その大柄な人影はとても繊細な女性らしい声をかけてきた。

「あ!もう起きて大丈夫ですか?どこか痛いところありますか?」

 

ん……?ルガディンの女性、かな?

あれれれ??女性か~、そうか~、そういうパターンもあったか~。

いや、むしろ、アリかも?悪くない、うんうん、全然悪くない。いい、むしろいいよ!

あたしが考え込んで固まっていると、彼女はそろそろとベッドに近づいて顔を近づけてきた。

 

「もしも~し、お話できますか~?」

「……あ、はい」

 

咄嗟にあほ面で返事を返してしまった。

 

「良かった~。あの、ごはんとか食べられますか?今ちょうど食堂で夕飯を食べてて、あなたが起きてたら食べられるか聞いてきてって言われて見に来たんです」

 

……?????

んんんんんん~~~~?????

これは、ひょっとして、ひょっとすると、「全く違うパターン」じゃないのかな~??

急激に自分が何を考えていたのかを冷静に考え出して顔が真っ赤に染まってきた。

 

「あの、大丈夫ですか?熱とかあります?お顔がとても赤くて……」

「だっ、だっ、だいじょぶ、だっ」

なんか今とてもくだらない事を言ってしまった気がする。

「大丈夫、です!食堂、行きます!ごはん、頂きます!」

「あ、はい、ご案内しますね、ついてきてください」

 

危ない危ない、なんだかとても失礼な事を口走ってしまう所だった。

なんだか頭がはっきりしないままルガディン(に見えるんだけど、ちょっと違う?)の女性について階段を降りて行く。

頭がボーっとしてるのはきっと寝すぎたせいなのかな。お腹が空いてるからかもしれない。

ごはん食べたらきっとはっきりするでしょ、うん。

 

一階に降りると、一軒家にしては長い廊下といくつかのドアが並んでいるのがわかった。

さっきまで自分がいた部屋を出た時にも思ったが、おそらくここはどこかのお屋敷?いやそこまで豪勢ではないな。小さな宿屋のようなものだろうか。

 

食堂に入ると更に二人の女性が席に着いていた。

こちらを見ている、というより「あたし」を待っていた?

「やっと起きましたね。よかった、わたしの服でサイズあってましたね」

ミコッテ……に見えるが良くみると耳の形が違う、気がする。

あたしと同じくらいか少し上の年齢に見える女性がまず声をかけてきた。

その言葉から察するに、おそらく枕元にあったこの衣服は彼女の物で、理由はわからないがあたしがこれを着るように用意してくれたのだろう。

「あ、えっと、着替え、ありがとう」

「いえいえ」

 

「ずうっと眠っていて、お腹が空いただろう、さあ、お座り」

ミコッテ風の女性の隣に座っていた、エレゼン?のおばあさんが優しく声をかけてきてくれた。

あたしの勘に間違いがなければ、おそらくこの人がこの宿の主人だ。

「ありがとうございます、いただきます……」

まだ自分がどんな迷惑をこの人達にかけてしまったのかわからないので気後れしつつ、遠慮がちに席についた。

テーブルの上に並んでいたのは鍋料理だった。

土鍋の中に入っていた具材は、キノコ、野菜、鶏肉、白くて柔らかい……これは……そう、豆腐だ、知っている。

それらを出汁を取ったお湯で煮込んで、小皿に取り分け、黒くて酸味のあるタレを少しずつ足しながら、ふーふーと息で汁を冷ましつつ口に入れる。

「おいしい……」

なんだか久しぶり……もう何年も何も食べていなかったような気持ちだ。

 

「美味しい~、私もお鍋久しぶりです」

隣に座ったルガディン風の彼女も一緒に食べる。

「お鍋?変わった名前の料理ですね、ステーキを焼いてもフライパンとは呼ばないでしょう?」

斜め向かいに座ったミコッテ風の彼女が変わった感想を言う。

「ふふふ……これはね、昔旅人に教わった料理なのよ」

エレゼン風のおばあさんが鍋の中身を小皿に取り分けてくれる。

 

しばらくは和やかに食事を楽しんだ。

 

「……さて」

ミコッテ風の彼女─食事中の会話からサビーネという名前だとわかった─が改まって切り出した。

緊張する、が、これはほぼ間違いなくあたしの話だぞ。一体何をしたんだあたしは。ドキドキ……。

「あなた、お名前は?どこからきたの?なにしにきたの?」

「名前……名前……は、えーっと」

なんだっけ、思い出せる思い出せる、えーっと、そうそう、みずほ、じゃなくて、えーっと、そうだ

「あ、ヴィヴィアンです」

「ア=ヴィヴィアン?」

「ああ、そうじゃなくて、ただのヴィヴィアンです」

「失礼、ヴィヴィアンね。同じヴァーナ同士呼び捨てで構わないですよね?わたしはサビーネ。見ての通りアウリルです」

何か違和感を感じたが、自己紹介をされたのはわかった。

同じヴァーナ同士?アウリル?

「わたしはこのルネスのムーンスター芸団で踊り子をしていて、この宿のエルばあさんとはそれなりに親しくさせてもらってます」

文脈からして「ルネス」は地名かな?国?街の名前かな。

エルばあさんは、このエレゼン風のおばあさんだな。さっきから穏やかに話を聞いている。

 

「私はマリー。えーっと、ドゥアン、のサムライです」

今度は隣に座ったルガディン風の女性が自己紹介をした。

おそらく「ドゥアン」は種族名?ルガディンではないらしい。

ということは先ほどのヴァーナというのも種族名か、アウリルってのはなんだろう。

サムライはわかるぞ。「侍」だな。つまり職業サムライ、傭兵や冒険者なのかな?

「生まれは、えーっと、ここより北の方で、つ、強くなるために、武者修行をしています!」

そう宣言する彼女の言葉にはどことなく覇気というのものが感じられず、まあ「これから強くなる」のなら、それもまた無理はないかなという気持ちになった。

 

「はい、ヴィヴィアン、あなたの番ですよ」

サビーネに話を振られた。次はエルばあさんの番かと思ってたけど、まあいいか。

「えーっと、あたしの名前はヴィヴィアン。サンシーカー族のミコッテで、出身は森の都グリダニア。えーっと、職業は吟遊詩人を、いや、踊り子だったかな、からくり士だったような……竜騎士だったっけ……」

なんだか記憶に靄がかかったようにはっきり思い出せない。

思い出そうとすると、たくさんの情報が出てくるのだが全く整理できない。何が本当のあたしだっけ?あたしって何者だ?何をして生きてきたんだ?ここで何をしている??

 

「サンシーカー族?ミコッテ?」

「グリダニアって、どこですか?」

「バードにダンサーに、からくり士ってのはわからないが、竜騎士ってのはつまりドラグーンかい?随分たくさん冒険をしてきたんだねえ」

サビーネ、マリー、エルばあさんが次々と質問をしてくる。

 

なんとなくわかってきた。この感覚、初めてじゃない。あたし「また」異世界に来たんだ。

 

「あの~、信じてもらえないかもしれないんだけど、あたし多分、ここじゃない異世界から来たみたいなんです」

 

すると三人は一瞬だけ固まって、次の瞬間あっさりと笑顔になってこう言った。

「あ~!なるほど異世界から!」

「あなたもアーシアンなんですね!」

「そうかいそうかい、そりゃあ難儀だったね」

 

意外なほどあっさり受け入れてくれたので、その後の面倒な説明をどう続けようか考えていたあたしは肩透かしを食らった。

 

3人があまりにもあっさり受け入れてくれた事にあたしが驚いていると、そこでようやくあたしがここに現れた経緯を教えてもらえた。

 

「温泉に、全裸で」

「そうなんです!私湯煙殺人事件かと思って驚いちゃって!」

「マリーったら腰を抜かして泣きそうになってました」

「溺れなくて良かったねえ」

 

どうやらあたしはその後半日近く眠りっぱなしでこの宿の世話になっていたらしい。

サビーネは劇場での公演を終えて、あたしと、エルばあさんの事を心配して戻ってきてくれたらしい。何も身に着けていなかったあたしの為に衣服まで用意してくれて。

マリーはあたしを同部屋に運び込んだ後、宿代代わりにこの店の雑用や風呂掃除を教わっていたそうだ。彼女は飲み込みが早く、一日で一通りの雑用仕事を覚えてしまったようだ。

エルばあさんは、時折あたしの様子を確認していたものの特に危険な事もなさそうなので、お客さんの食事を用意したりマリーに仕事を教えたりしていたらしい。

 

あたしがこの世界に現れてからの今日一日の流れは大体わかった。

今日はもう遅いので、続きはまた明日以降ということで今夜の食事はお開きになった。

サビーネは自分の芸団の寮があるらしいので今夜は帰っていった。

あたしとマリーはエルばあさんと一緒に食堂を片付け、自分達の部屋に戻った。

 

 

「とは言え、さっきまで眠ってたから全然眠くないんだよね~」

「ですよね」

「マリーは今日一日働いて疲れてるよね、無理しないでいいから眠ってね」

「いや~それが、私もこの体になってから体力が有り余ってて、まだまだいけちゃう感じなんですよね」

「へ~。体力あるんだね~……ん?この体になってから?」

「ああ、いや、なんでもないです、まだ全然眠くないですから何かお話しましょうか」

「そうだね、できればこの街の事やこの世界の事を少し教えてもらいたいな」

「うーん、そうですね。私も旅を始めたばかりなのであまり詳しくは知らないのですが、異世界から来たヴィヴィアンさんにも関係あるかもしれない、異世界から来た学校の話をしましょうか」

異世界から来た学校?」

 

 

 

 

 

 

アリアンロッドRPG 2E 「穿て 異界の門」外伝

異世界人ヴィヴィアンの旅路

ルネス編①「異世界からきた猫娘

 

つづく▼

crimsondarkness.hatenablog.jp

*1:狼族

*2:アリアンロッド公式では「エリンディル大陸」ですがGMオリジナル設定の「エリディル大陸」を使用。本編は主にGMオリジナル設定だけど、私の外伝では公式の設定もいくらか参考にしています。

*3:猫族

閑話休題(TRPGアリアンロッドRPG 2EとFF11とFF14のお話)

 

なんで今更になって8年だか10年前に引退しちゃってるオススメ*1私小説なんか書いちゃってるのか。

なんで続けて14ちゃん*2私小説まで書いちゃってるのか。

その理由は今現在ハマってるTRPGアリアンロッドRPG 2E*3」のシナリオの登場人物として自分のキャラクターをFF14からそのまま引っ張って使用したからです。

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別にキャラ引用するなら11からMizuho引っ張ってきても良かったんだけど、AR2E用のキャラシートに自画像載せる時、FF11のキャラだと解像度低いしポリゴン荒いのでいい画像がなかったから、じゃあ14でいっか、という安易な理由。

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せっかくならオリジナルキャラの設定作って1から考えても面白かったのになんで引退したMMOからキャラ引っ張ってきたかって考えると単にこの自画像問題を考えた時にカッコイイ画像使いたいな~と思ったからでした。

 

で、せっかくFF14からキャラ引っ張って作るなら昨今流行の*4異世界転生キャラにしてしまおうと思って、FF14の世界からアリアンロッド世界に転生した→FF14の前はFF11世界にいた→元を正すとプレイヤー自身がオリジナル存在なのでは!?という話が膨らんで、今のところ着地点は見えないもののシナリオの中ではわりと主人公よりなムーブをかまして面白おかしくやってる感じなので、現在プレイしてるシナリオに影響しない程度に自分のキャラクターの背景を膨らませてみようと思って書き始めたのが↑の2つのエピソードオブなんちゃらです。

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このあともちょっぴり本編*5に繋がるまでの話を書こうと思ってるところです。筆の勢いが止まらなければ思ってるだけに留まらずこのまま続けて書く予定。あくまでも予定。

 

GMのシナリオの邪魔をしない程度の設定を膨らませたくて提出したテキスト

ヴィヴィアンの今までの発言から逆算した矛盾しないキャラ背景

・今まで異世界転生してきた時は記憶がなかったので過去についてのしがらみがない件


そもそも「毎回記憶がなかった」という事を覚えている発言自体がおかしいので
「いつも記憶リセットされてる気がするな~」ぐらいの感じで本人が認識しているだけという事にします。
実際の所はFF11→14移行の段階では記憶引継ぎ、14→アリアンロッドで記憶喪失という事にしようかと。

 

・ヴィヴィアンの存在とは


ある程度シナリオで融通が利くように絶対的なこれというのを決めない方がいいかと思っていましたが
FF14というMMOゲームのキャラクターが実体化したもの」
「何故かそれがアリアンロッドに現れた」
FF11及び14のキャラクターは消えていない(データが残っているので)」
「AR2Eのヴィヴィアンは眠っている時の夢だったり時々起きるフラッシュバック的なもので記憶を取り戻しつつある」
「ヴィヴィアンは自分がゲームデータであるとは認識していないし11や14がMMOの世界だとも認識していない」
↑これくらいは決めておこうと思いました。

 

 

↓ここは自分でぼんやり考えてますがシナリオ的に組み込むのが難しそうだったら全然採用しなくて問題ないです。
後付理由だけど、FF11のキャラクターも14のキャラクターもそれぞれ新規にキャラメイクされたのに
なぜAR2Eのヴィヴィアンは14からそのまま転がりこんできたのか?という辺りが自分探しの理由の1つになればいいかな?
14の世界になんらかのバグが発生してAR2E版ヴィヴィアンが生まれてしまい、AR2Eの世界に現れたとか
後々になって自分が存在してはいけないバグだったと気付いた時の不気味感が出たら面白いかも?
でも性格的にそれを知っても気にしないかもしれない。

 

そもそも最初はシュタゲの並行世界やログホライズン的な現実との乖離現象を考えていました。
が、ストレンジャーガイドの「ウィアードアース(奇妙な地球)」という、
「現代地球と言ってもリアル世界じゃないし色んな現代地球があるから近未来SF地球もあれば江戸時代や幕末地球もあるしサイバーパンク地球もあるしみんながみんな同じ地球から現れた事にしなくても自由にしていいよ!」
というなんだそりゃなんでもありじゃねえかよ設定を読んでしまったのでそもそもヴィヴィアンはヴァーナに拘らなくてもアーシアンでいいのか?
でも公式アーシアンの出自の「事故、召喚、転生」はいずれも元の世界の存在は消えているので、
オリジナルデータが存在するヴィヴィアンはアーシアンの出自が適用できないからヴァーナでいいのだろうか?


↑ここちょっと悩んでますがGM判断で「こっちの方がシナリオに生かしやすい」ってのがあったらシナリオ進行の良き所、
例えばリビルドタイミングとか西方エリアに移動してストレンジャー適用タイミングとかに種族変更の指示をもらえたらいいかなと思ってます。
変更しなくていいならそのままでOKです。アーシアンになりたい訳じゃなくてどっちが合ってるのかな?と思ってるだけなので。

 

・ヴィヴィアンがAR2Eに誕生(ストレンジャーガイド規定の事故召喚転生はどれも当てはまらないので「誕生」?)してからイエーレンに辿りつくまでの経緯


公式マップを参考にするとエリンディル大陸西方から東方までは無限の砂漠というのがあって険しい道のりになりそう
リディル大陸も大体似たようなものだと仮定して、
ヴィヴィアンの出身地は後々チェイサー取得の為に神殿本部がある聖都ディアスロンドの近くにしておきたかった。
でも聖都(または大学都市オーカー)に登場しちゃったら異世界冒険者がそこから離れる方が不自然なので聖都の近くの温泉街ルネスを設定。
異世界から大学まるごと転生してきた大学都市オーカーも近くにあるので異世界人(と思い込んでる)のヴィヴィアンも受け入れ易いのでは?との思惑もありました。

 

で、ここから本題だけど、今までのシナリオでヴィヴィアンは聖都ディアスロンドも大学都市オーカーも、
話は聞いた事ある(保護してくれたおばあちゃんに聞いたのか、ルネスからの旅路で知ったのか)けどどちらにも行った事がないと発言。
ということは陸路で考えるとルネスから北を経由して無限の砂漠から大草原を越え、山脈などを迂回してイエーレンに着く事になるので
ディアスロンドやオーカーに立ち寄らないのは不自然。
さらに北から迂回してきたならサップモローに初めて訪れるのも、北方開拓団について「北には何があるの?」と聞くのも不自然なことになるので海路を選択します。
※無限の砂漠を中央突破するルートはディスカバリーガイドの地図には載ってなかったので、おそらく一般的ではない危険なルートなのだと解釈しました。

海路になるとそれはそれで大陸を大きく迂回する事になって、補給やらなんやらで様々な港町に立ち寄る事になりそうなので
おそらく色んな港町の酒場で情報を仕入れたり、吟遊詩人ぽい事やダンサー的な事をしてお金を稼いだり
冒険者らしく簡単な依頼をこなしたり人助けしたり紆余曲折があったのかなーと。
そのあたりのコネクションなんかが後のシーフのクラスロール「クリミナルハンド」で生かす事ができるかな?
とかゲッシュのシナリオ(例えば妖精騎士の弟子)もその旅路で経験したとかが可能になるかなと考えています。

 

FF11~14時代の記憶とルネスからイエーレンまでの簡単な経緯は余裕があればヴィヴィアン一人称の自分シナリオをちょっと書いてみたりしようかなと考え中。

 

 

ちなみに私のTRPG歴は大昔*6富士見書房だか角川の「ガープスシリーズ」のルールブックを買って「一人で」キャラメイクしたりリプレイを読んで面白がってたり、20代手前の頃に当時の年上の友人に誘われて現代異能力系のTRPG*7を1セッションした程度のもので、真面目に1からキャラ作ってがっつりオンラインセッション続けてるのは今回のアリアンロッドRPG 2Eが初めてのようなもの。

 

そのレベルの人がとっつきやすく入れるゲームシステム*8で、世界観がかなり自由(何しろ最新版の拡張ブックでは「現代地球から異世界転生してきたアーシアン」という種族が使えるなんてぶっ飛び具合*9)な上、種族的にもFF11FF14と親和性が高そう(ヒューリン*10、エルダナーン*11、ヴァーナ*12、フィルボル*13、ドゥアン*14など)なので、一人称私小説書いて膨らませても面白いかも~ってな気持ちで書き始めました。どこまで続くかは未定。プレッシャーかかりすぎると一気に面倒くさくなって全部放り出しかねないので予防線張りまくるスタイル。

 

アリアンロッドRPG 2E 公式サイト

国会図書館アリアンロッド関連書籍を閲覧してきた日記

 

あと今回この私小説を書くにあたってFF11の世界設定やFF14の世界設定調べなおしてたら*15、なんか14の設定は今までのFFシリーズナンバリングを並行世界に見立てた話になってるとか?まさに異世界転生話にうってつけじゃ~ん!と思って尚の事便乗ブラザーズぶちかましてる気持ちでもあります。

 

 

それから14ちゃんのキャラ設定ちゃんと確認しなおそうと思ってLodestone入ってみたら私がプレイしなくなった数年後に「FC移行するからビビさんにマスター移行しますねw」ってメッセージ書いてあったり、「いつか帰ってくるの待っています」とか書いてる人がいて、なんかいろいろ申し訳ない気持ちになったのでPC版14を起動したらたまたま無料ログイン帰還が4日分残ってて、ちょうどいいから4日分休みができたらログインして挨拶ぐらいしようかな~なんて思ってたら気が付いたらまだログインしてないのに残りログイン可能日数2日に減ってて、

「おい!キャラクターセレクト画面見ただけで減るのかよ!」

と慌ててログインして肝心の知り合いを探すも誰もログインしておらず、双剣士クエストを少し進めてみたりゴールドソーサーで遊んでみたり、別キャラを作って初期シナリオを見返したりもしてみました。

ちょっとだけ触って感じたのは、ソロでずーっと遊べるならアリかもしれないけど、IDやるのにパーティ必須で失敗したら気まずい感じが続くのだと、長く遊ぶのはしんどいな~という気持ちでした。

 

わがままなんだけども、MMOやるのに第一線でずっとログインできる人ならともかく、他のゲームしたかったりテレビ番組見たかったり、リアルのお仕事忙しかったりその他諸々の事情でMMO一本に情熱をかけられない人にとっては、パーティ必須を強制されるのって結構しんどい気がするんですよね。

いや主語を広げると語弊があるので言い直すと私にはしんどいです。

一人でも十分遊べるし、仲間と攻略することもできる、ぐらいが一番ベスト。

仲間がいないと一人じゃ遊べない、は結構しんどい。

一人でいいならオフゲーやってろよは真理でもあるけど、オフゲじゃない魅力もちょっぴり欲しいのが私の希望。

 

またそのうち気が向いたら14も触るかもしれないし、今や土日休みのサラリーマンでも1ヶ月あれば新規から99までソロで上げられるという噂の11も復帰するかもしないかも。

からくりAFとか竜AF欲しいしミッションちゃんとクリアしたいし~。

あと遊びで作ったNareeema*16さんをサポジョブ無しで青AF着せてカダーバの浮沼の本物のNareemaさんに並べてSS撮る夢も今ならそう難しくないのかもしれない。

夢は膨らむけど、私のやる気スイッチがいつ入るのかはまだわからない。

 

*1:FF11の愛称であり蔑称

*2:FFXIVの愛称であり蔑称

*3:AR2E

*4:世代的にはずっと昔から異世界転生話を面白く読んでたのであまり流行りに乗ったとは言いたくないジレンマ

*5:TRPGのシナリオを書いてるのは私ではなく別のGM

*6:小学生の頃だったと思うから、20~25年前ぐらい?

*7:多分押し入れにルールブックがあるけど名前忘れた

*8:とはいえRPGに対する基礎知識ぐらいは必要

*9:そのせいで古参の世界観を大切にしてきたプレイヤーには一部不評だったりするらしい

*10:いわゆる人間

*11:エルフタイプ

*12:猫族兎族狼族という獣人系

*13:小人族

*14:角のある大柄な種族

*15:忘れてる話多すぎるし11に至っては経験してない話がたくさんw

*16:誤字じゃない

EP of Eorzea

crimsondarkness.hatenablog.jp

 ▲のつづき▼

 


『……て……』

声が聴こえる……

『……て……感…て……』

妙齢の……女性?の声だ……

 

 

 

 

 

「お~い」
「ヴィヴィアンさーん」
「ビビさん起きて~」

ん……聴こえる……たくさんの声……

「ビビさん起きろ~!レイズ~!」
暖かい魔法の光が私の体を包むと、眠気、いや気絶していた私の意識もはっきりと目覚め出す。

「う……う~ん……」
おかしいな、なんか不思議な夢を見ていたような気が……

「気が付いた?まだ行ける?」
私にレイズをかけてくれた白魔道士の彼女は私と同じ猫の耳と尾を生やしたミコッテ。
正確にはサンシーカー族の私とムーンキーパー族の彼女は少し生まれと育ちが違うのだが、まあ元を辿れば大した差ではない。

「あ、私やられてたのか、ごめ~ん」
意識が戻って今の自分が何をやっているのか思い出した。

ここはゴブリン族の長「ブレイフロクス」がその仲間と共に平和に暮らしていた「ブレイフロクスの野営地」。

 

 惑星ハイデリンには大きく分けて3つの州が存在する。
ガレマール帝国が支配する北州イサルバード大陸。
同じくガレマール帝国の属州とされている東州オサード小大陸。
そして西州アルデナード小大陸は、3つの州を代表する6大都市国家のうち3つの都市が存在し、海の都リムサ・ロミンサ、砂の都ウルダハ、森の都グリダニアを拠点とする冒険者達には広く「エオルゼア」と呼ばれている。*1

ここ「ブレイフロクスの野営地」はその中でもリムサ・ロミンサを都市に構える東ラノシア地域の西部にあるレインキャッチャー樹林の奥地にある。

 

 元々の経緯はこうだった。
ゴブリン族の女族長ブレイフロクス曰く、「仲間達と平和に暮らしていた野営地をモンスターに襲われてしまったので助けて欲しい」との事だった。
一度はその依頼を受けてゴブリン族を窮地から救ったのだが、未だにモンスターとゴブリンによる小競り合いが続いているらしく、何度か仲裁という名の用心棒を頼まれるようになった。
冒険者側には何のメリットもなさそうに思えるのだが、その小競り合いを仲裁した際の戦利品は自由に持って帰って構わないとブレイフロクスから約束を取り付けているので、冒険者にとっても旨みのある仕事となった。

私はと言えば丁度この「狩場」で手に入る装備を一式揃えたいと思っていた矢先で、これ幸いと何度かこの依頼を受けてはいるのだが、初対面の冒険者とは中々馬が合わない事も多く、満足にモンスターを倒せずに解散する事もしばしば……。


そんなある日、いつものように「ブレイフロクス野営地」での戦闘を終えて、所属するカンパニーで「ブレフロ行ってきた~」と帰還報告をすると返ってきた言葉が

「いってらっしゃい!」
何か勘違いされてるなと思って「あ、さっき行って帰ってきたところなんです」と説明し直すともう一度返ってきた言葉が

「じゃあ行かなくちゃ!」
という訳でこのスパルタお姉さんに引率されて何度目かの「ブレフロ戦」を繰り返しているところだった。

 

「よし!じゃあ元気出してもう一回行くよ~!」
「お~!」
普段なら何度か失敗した所で疲れて解散してしまう私だったが、今回は彼女のおかげで諦めずに挑戦を続ける事ができた。
無事に襲撃してきたモンスターを撃退し、彼らから奪い取ったインファントリー装備やアーチャーリングを手に入れる事ができた。

「アーチャーリング!私この依頼何度も受けてるけど初めて見たよ~」
「えー、そんな貴重なアイテムなの?私がもらってもいいのかな?」
「いいよいいよ!私はあくまでも魔法使いだし、吟遊詩人のビビさんにピッタリだよ!」
「本当?じゃあ、遠慮なく、いただいちゃいます!ありがとう~!!」
「おめでと~!!」

同じ仕事を受けた他の冒険者も賛同してくれたので、貴重なアイテムを貰い受ける事が出来た。
カンパニー仲間の彼女にも祝福され、一時の仕事仲間とも解散して仲間達が待つハウスへと改めて帰還した。


 「カンパニー」─「別の私がいた世界」では「リンクシェル」とも呼ぶし、また別の世界では「ギルド」とも呼ぶらしい。
要は一時の仕事仲間ではなく、困難があれば助け合う為に冒険者同士が群れを成して徒党を組んだ組織と言えばいいだろうか。
私がこのカンパニーに誘われてから数ヶ月が経った。

 

 始まりはいつだったか、一人どこかの森の奥を探索していた時、どこかで誰かがモンスターと交戦していたのでその手助けをしたのがきっかけだったと思う。
初めて出会った彼、いや彼女だったか……正直今はもう思い出せないのだが、とにかく「その人」に誘われた私は最初は徒党を組む事を渋った。
「別の世界の私」を思い出してしまったせいだ。
きっとこの世界でも私は周りに付いていけず、いつか手が届かない程の距離が開き、そしてまた一人怠惰な冒険者生活を送るのだろう。
そうなった時、きっと私はまだ見ぬ仲間達にとって「お荷物」になり、いつしか「邪魔者」になってしまうのでは……。
それならばいっそ、誰とも徒党を組まずに一人でいた方が周りの人の為、いや、自分の為にもそうした方がいいのではないだろうか。
そこまでハッキリと自分の悩みを打ち明けた訳ではなかったが、まあ大体そのような身の上話を打ち明け、せっかくのお誘いですが遠慮しますと断ろうとした時、彼(彼女)は「自分も同じです」と語った。

「自分も他の人に合わせられないタイプだし、このカンパニーもきちんと管理できるかわからないけど、それぞれ自分のペースでしか冒険できない人たちが集まれる場所になればいいんじゃないかと思ってて。だからヴィヴィアンさんにもきっと合ってると思うんです」
その話に共感し、再度誘ってくれた彼(彼女)の言葉に感謝をして晴れて私もこのカンパニーへと入団したのだ。

 


 次に「別の世界の私」についてだが、結論だけ先に話すと、私Vivienne Aenslandはこのハイデリンとは異なる世界ヴァナ・ディールからやってきた転生者だ。
とは言ってもこれがまたこの世界では珍しくもなんともない。
私のようにヴァナ・ディールから転生してきた冒険者は数多くいるし、ヴァナ・ディール以外から転生してきた人もたくさんいる。
だから殊更「私は異世界人です」と説明する必要もなく、おそらく「前世」(便宜上前世と呼ぶが、別に「あっちの私」が死んだ訳ではない)で一緒に戦った仲間もいるかもしれないが、私はあえて「前世の私」を公表していない。
その理由については深く語るつもりもないが、簡単に説明するなら「その方が都合がいいから」である。

 

ヴァナ・ディールからこのハイデリンへ来るきっかけになった話をするなら、冒頭の不思議な声の話に遡る。

 

 

 

『……て……』

『……て……感…て……』

『……聞いて……感じて……考えて……』

 

妙齢の、おそらく女性と思われる声を聞いて目を開くと、そこは地面も空もなく、周囲に星が煌く宇宙空間のような場所だった。
私はその宇宙空間でふわふわと浮かびながら誰ともわからない声の主を探していた。
すると突然何もない空間に見えない地面が出現し、私は「見えない地面」に降り立った。
目の前に広がる宇宙、その先に輝く光、光から生まれる真っ黒い渦、闇の中から黒ずくめのローブを纏った一人の男が現れた。
男は怪しげな仮面で顔を隠していたが、何か邪悪な存在だと私は直感した。
次の瞬間、私の体全体を光が包み込み、力が溢れてきた。
『闇を打ち倒せ、光の戦士よ』
言葉ではなく、その意志が伝わってきた。
私はいつのまにか手にしていた弓を構え、闇から現れたローブの男を目掛けて矢を放った。

 

 

場面が変わり、気が付くと私は馬車に揺られていた。

 

待って、ちょっと待った、なんでなんで?
私はまだ頭の中に微かに残っていた「何かの意志」に向かって強く問いかけた。


『……どうしましたか』


反応があって良かった、このまま無視されて話を進められる所だった。


『私はそのつもりだったのですが』


いやいやいや、困ります。ていうかここはどこ?私はだれ?あなたは何様?


『ここは惑星ハイデリンにあるエオルゼア。あなたはこの世界で光の戦士となるべく冒険を始めるのです』


ハイデリン?エオルゼア?それってヴァナ・ディールのどの歴史と関係あるの?私まだ過去世界の戦争の歴史も見終わってないんですけど。てゆうか闇の王ともまだ戦ってなくて、これ以上新しい情報入れられるとパニックなんですけど。


『……あらあら……まあまあ……それはそれは……』


なんですかその呆れたような声は。あとさっきの質問ちゃんと答えて!あなたは何様?女神アルタナ?男神プロマシア


『アルタナにプロマシア。ヴァナ・ディールの神々ですね。まず1つあなたが認識するべきは、ここはヴァナ・ディールの未来でも過去でもありません。惑星ハイデリンです』


『そして私は言うなればハイデリンの意志。今はそれだけ申しておきましょう』


『本来ならあなたのようにヴァナ・ディールで長い年月を過ごした冒険者は「調停者」によって振り分けられ、闇の戦士としてアシエンを打ち倒したりと様々な選択肢があったのですが……』


何かわからない単語がたくさん出てきましたね。そして何か言い淀んでいますね。どうぞ遠慮なく続けて下さい。


『あなたのようなレベルの低い未熟な冒険者は調停者に選ばれなかったので、改めて光の戦士として1からこのエオルゼアで鍛えなおそうという事になったのです』


……うーん、とっても失礼な事を遠慮なく言われた気がするけど何も言い返せない。
質問ですけど、ヴァナ・ディールの私はどうなってるの?リンクシェルの仲間もいるし、これからからくり士として頑張ろうって所だったんですけど。


『ご心配なく、異世界ヴァナ・ディールはあなたにとっては夢の世界のようなもの。今のあなたがこの世界で眠りにつけばあちらの世界へ帰ることはいつでも可能です』


なるほど、並行世界って訳ね。理解した。「大体わかった」わ。そして改めて言わせて。「ここがエオルゼアの世界か」。


『急に理解が早くて助かります。その他ヴァナ・ディールと違うエオルゼアの常識はこれからあなたの頭の中へ直接伝えていきますね』


ふむふむ、ヒュームはヒューラン、ミスラはミコッテ、エルヴァーンはエレゼン、タルタルはララフェル、ガルカはルガディンって呼ばれてるのね。
ああ、それから引継ぎについてはどうなってるの?


『引継ぎ?』


そう、引継ぎ。だって私ヴァナ・ディールでは結構長い時間冒険してきたんだよ?
色んなジョブ転々としてきたし、装備とかお金とか、まあそんな威張るほど持ってないけど、それなりに貯めてるつもりだし、こっちの世界でもその分配慮してくれていいんじゃない?


『……それに関する抗議デモなら随分昔にありましたが、結論から言うと引継ぎはありませんね』


え~、ないの?ていうか抗議デモとかあったの?うける。


『先ほどもお伝えしましたがそもそもヴァナ・ディールでのあなたという存在は消えていませんから、このエオルゼアに引き継がなくても一切問題ないはずです。あちらの世界に用事があればいつでも夢を通じて戻って構いません』


ふ~ん、その辺結構融通きくんだ。いいわ、オッケー、理解した。


『では物語を進めてよろしいですね?ちなみに今のあなたの姿は潜在的にあなた自身が望んだ姿が反映されているはずです』


そう言われて初めて気付いたが、ヴァナ・ディールではヒュームだったはずの私の体からは尻尾が生えて、耳の位置も頭の上にあって、この姿は……ミスラ─この世界ではミコッテだったか─に変貌していた。

 

 

 


「なあ、お前さん、大丈夫かい?」
今度は頭の中ではなく、はっきりと目の前から声がした。
馬車の向かいの席に座っていた、浅黒い肌と金色の立派な髭を蓄えたヒューム─こっちではヒューランか─の男性だった。
彼の目には私がうなされていたように見えたらしい。「エーテル酔いか?」と心配された。
彼の話によるとこの馬車*2は森の都グリダニアに向かっているらしい。
大体の事はさっき『ハイデリン』とやらに聞いたので話を合わせておいた。
「俺はブレモンダ、こうして会ったのも何かの縁だ。お前さんの名前も教えてもらえないか?」
名前か、そうだな、容姿も種族も変わったんだから、名前も変えてみるか。
あの名前を名乗らなければ、こっちの世界では何も後ろ指さされる事なく生活できるだろうし。

「私の名前はヴィヴィアン。……ヴィヴィアン=アーンスランドよ」
ファミリーネームも咄嗟に考えた。家族なんていないから何でも良かったのだが、なんだか記憶の隅にひっかかる名前だったのだ。

 


 それからの冒険者としての生活は慌しかった。
グリダニアでの生活に慣れたかと思ったら飛空挺に乗って三国を巡り、「暁の血盟」と名乗る組織に勧誘されて「蛮神」となった召喚獣を鎮める為にイフリート、タイタン、セイレーンを討伐し、その道中に現在も所属しているカンパニーに誘われたり、気が付けば数ヶ月で私は弓使いからクラスチェンジして一端の吟遊詩人を名乗れる程には成長していた。
この分なら私は「あっちの私」よりずっと強くなれる、誰かに後ろ指さされずに堂々と冒険者を名乗れる、そう思っていた矢先、ふとした時、ふとしたきっかけ、小さな綻びが、自分自身を蝕む。

 

倉庫に、物が、溢れすぎている。


リテイナー*3に管理を任せている道具や武具と、自分の鞄にぐちゃぐちゃに詰め込まれた道具の数々を見た時、何かが折れる音がした。


「う~ん、もう、めんどくさ~い!」

 

こういう時は気分を変えよう、世界を変えよう、ここじゃないあちらの世界へ。

 

そういつものノリでベッドへダイブした。

 

しかしその日はいつもと何かが違った。

 

時計の音、洗い場に流れる水の音、窓の外から聞こえる草木のそよぐ音、全てがいつも通りのはずだった。

 

しかしその日はいつもと何かが違った。

 

 

 

 

 

 

アリアンロッドRPG 2E「穿て 異界の門」外伝

異世界人ヴィヴィアンの旅路

序章2──エピソード オブ エオルゼア──

 

 

つづく▼

crimsondarkness.hatenablog.jp

*1:地名・国名/エオルゼア - FF14 Online Wiki

*2:車を引いているのはチョコボなので正確にはチョコボキャリッジと呼ぶらしい

*3:この世界の冒険者専属のメイド、あるいは執事にあたる仕事。冒険者の宿の留守を守り、装備や道具、金銭の管理も任せられる信頼できる人物しかなれない職業

EP of Vana'diel

『第一級戒厳令発動!!
 死者の軍団行軍中!防衛ライン突破!アルザビ到達までの予想時間20分!
 五蛇将及び皇国軍正規兵、他戦闘可能な傭兵達は迅速に配置につけ!
 非戦闘員はアトルガン白門へ直ちに退去せよ!繰り返す!防衛戦準備をせよ!』

 

 皇都アルザビの朝は早い。正確には朝でも夜でもおかまいなしに蛮族軍が襲ってくるのだが。

ここはアトルガン皇国の首都アルザビ。
近隣の獣人諸国からマムージャ蕃国軍、トロール傭兵団、死者の軍団と呼ばれる獣人達が軍隊を率いてこの国の「魔笛」を奪いに襲ってくるのだ。

 

しかしけたたましい号令とは反対に、その場に集まった傭兵*1達に緊張感は微塵も感じられなかった。
それもそのはず、何しろ本来なら蛮族が市街地に到着する前の行軍中に撃退できてしまう程の腕前を持った冒険者達が何百人も集まっているのに、わざとここ首都アルザビでの防衛戦を起こさせているのだ。

 

 一体何の目的でそんな事を?
1つは傭兵として働いた事をこの国の役人に認めさせ報酬*2を得る事。
もう1つは少人数では蛮族に挑んでも返り討ちに遭ってしまうような未熟な冒険者でも、この市街戦でなら歴戦の冒険者や皇国軍の五蛇将の陰に隠れながら自分の腕を磨けるからだ。


はっきり言ってこの市街戦に危険な要素などほとんど無いと言っていい。むしろ蛮族軍が憐れに思えてくるほどだった。

「行くよナデシコ、アクティベート!」

私はいつものように相棒のオートマトン「Nadeshiko」を起動させ、死者の軍団*3を待ち構えた。


 何を隠そう私もこのヴァナ・ディール*4では少しは名の知られた冒険者
バストゥーク共和国から出立し、サンドリア王国、ウィンダス連邦、そしてジュノ大公国で数多の名声を馳せて来たMizuhoと言えば多少の知名度はあると自負している。

 

 駆け出し冒険者の頃は「モンク」として拳1つで敵を倒して身を守りながら旅を始め、「戦士」「シーフ」「白、黒、赤魔道士」と冒険者としての基本職を転々とし、「ナイト」「暗黒騎士」「狩人」「吟遊詩人」「獣使い」数々の上級職に就く事も認められるようになり、ある時は小さな飛竜に愛される「竜騎士」として、またある時は光の召喚獣カーバンクルに認められた「召喚士」として、「ひんがしの国」から伝来された職業「忍者」として戦う事もあれば、ここアトルガン地方では不滅隊のNareemaさんの不思議な魅力に取り付かれて同じ「青魔道士」の使徒になり、ひょんなことからアトルガン皇国に反旗を翻す海猫党にも認められ海賊「コルセア」としても活躍し、Shamarhaan師匠と、兄弟子(って呼びたくないけど)のIruki-Warakiには「からくり士」として太鼓判を押され、他にも見習いだけど「学者」として学んだ事もあればブリリオート舞踏団の「踊り子」としても認められているこの私がいれば、たかが蛮族軍の一つや二つ、朝飯前に撃退して今日もナリーマさんにお弁当を届けに……

 

『みずほ~ん、今何してるの~?』
耳に着けたリンクパール*5から友人の声が聞こえる。
「今ね~、アルザビでビシージ*6してたよ~」
『おつかれ~。戦績貯まった?』
「うん、結構貢献したと思う~。今レイズ待ちしてる~」

 

 大量のスケルトンに囲まれてる最中敵のラミアの魅了攻撃を受けた私は、自分の意志と関係なく体の自由を奪われ、意識が戻った時には声を出すのがやっとの状態で地べたに倒れていた。周りの歓声が上がった様子からすると蛮族軍は撃退できたらしい。
辛うじてリンクパールで会話をしていた私にどこからか暖かい魔法の光が降り注いだ。運が良かった、蘇生魔法「レイズ」だ。

 

 体の感覚も戻ったので起き上がって礼を言おうと、目の前にいるであろう白魔道士の姿を探すと今の今までリンクパールで会話をしていた友人その人だった。


「来てくれたんだ!ありがとう~!」

「ついでがあったから寄っただけだよ~」


 彼女は私の所属するリンクシェル*7のリーダー。

私と同じヒューム族だけど私より少し年上で、私と違って本物の高レベル白魔道士

要するに、はっきり言うと、
「歴戦の冒険者や皇国軍の五蛇将の陰に隠れながら自分の腕を磨く未熟な冒険者」とは、つまり私の事だ。
いやさっき語った私の冒険譚も嘘ではない。いろんなジョブを転々としたけどそれほど高レベルではないだけ。
「侍」になるクエストは一人じゃ無理そうだったから諦めたし。
「モンク」と「からくり士」はそれなりに自信あるんだけどね?うん、まあ、それなりに。……そこそこ?
バルクルム砂丘の巨大蜻蛉Valkurm Emperorを一人で倒したこともあるし!ほら!姫帝羽虫の髪飾り!

 

「みずほん誰に言い訳してるの?」
「いや、なんだろう……自分に?」

 

 市街戦の終わったアルザビはまたいつものように賑わっていた。
先ほどの戦闘の功績を称えあう轟きが響きあい、五蛇将を讃える雄叫びもあちこちから聞こえてくる。
そんな中近くの冒険者達からは私のような未熟な冒険者を邪魔に感じる声もちらほら聞こえてくる。
この群集の中で多少そんな声が聞こえてきた所で今更気にするような繊細な性格ではないのであまり気にはしてないが、自覚はしてるので少し恥ずかしい。

 

 この世界、ヴァナ・ディールで冒険者として歩み出してから何年経っただろう。
もういちいち覚えていやしないが、その昔一緒にコンシュタット高地でゴブリンと戦った友人、バルクルム砂丘で巨大魚や為、じゃなくて蟹を狩って修行を重ねた同志達、クフィムでスケルトンやギガース達を相手に戦った仲間達、には同じリンクシェルに誘ってもらった。

それから紆余曲折あって違うリンクシェルに移ったりもしたけれど、当時の仲間とはこうして今も付き合いがある。

しかしどの友人も間違いなく私よりずっと強く、ずっと遠く、手の届かない先に進んでしまっている。


 いったいどうしてそんなに差が開いてしまったのだろう。いや理由はわかっている。
私には向上心がない。競争心もない。一人でのんびりしているのが好きなのだ。
飛竜の卵を孵して生まれた仔竜に認められ「竜騎士」になれた時も、強くなる事よりその仔竜*8と遊ぶ事を優先していたし、七つの天候を巡ってカーバンクルの紅玉から霊獣カーバンクルを召喚し、見事「召喚士」として認められた後も、それ以上の強い召喚獣と契約する事よりカーバンクルを連れまわして遊んでいた。

ここアトルガン地方において入手した旧型のオートマトンオートマトン工房のGhatsad親方に修理してもらい、「からくり士」になってようやく真面目に相棒ナデシコと共に強くなろうと思い始めたぐらいなのだ。
超ウルトラスーパースロースターターなのだ。大器晩成型なのだ私は。

 

 見ず知らずの他人に何を言われようが気にするような事ではない、我が道を行けばいいだけの事。
幸い私のリンクシェルの仲間達は私がどんなにゆるやかな冒険者生活を送っていようが何も口を挟む事は無く、逆に何か自分の力だけではできない事を口にすると積極的に助けてくれるような頼りになる人達なのだ。
何を気に病むことがあるだろうか。

レイズで回復をしてくれたついでにジュノ大公国まで転送魔法テレポをしてくれた友人は、同じくリンクシェルの仲間であり彼女の配偶者である高レベル戦士のヒュームの鍛冶職人と共に高レベル冒険者用のバトルフィールドへと向かっていった。

 

 私は彼女達についていけるようなレベルではないので、バタリア丘陵の虎を狩りに、いやアルテパ砂漠に行くべきか……


一人でブツブツ悩んでいると少し離れた所からひそひそと声が聞こえた。
「あれって、みずほ?」
「あの装備ってことは、まだあのレベル?」
「まだやってんのかよ」


 長年冒険者として各国を渡り歩いてきた知名度は、自負している。
とは言えそれも名声だけに留まらず、あまり聞きたくないような噂話をされる程度には知名度があるらしい。
見ず知らずの他人に何を言われようが気にする事ではない。
そう思ってはいても、それも塵も積もればなんとやら、次第にやる気がなくなってくるのだ。

背後で嘲笑していた冒険者達にヘラヘラと笑顔を交わしてモグハウスに入ると、ベッドに寝転んだ。
こんな時、以前酒場で一人で愚痴を溢していた時に何気なく投げかけられた言葉が胸に刺さった事を思い出す。

「やめればいいじゃん」

辞める……何を?冒険者を?なんで?噂話されたくなかったら辞めろって?どうして?
関係ない他人に口出ししてくる人の為に何で私が自分の生き方を変えなきゃいけないの?


言いたい言葉が溢れてくるのにそれをぶつける勇気がなかった。

何よりその言葉は、私自身が私に向けて何度も繰り返しぶつけて自分を責めてきた言葉だったから。


「……辞めちゃおっかな~」

何度呟いたかわからないその言葉を吐き出して、そのまま不貞寝をした。

 

次に目が覚めた時、私は違う世界にいた。

 

 

 

アリアンロッドRPG 2E「穿て 異界の門」外伝

異世界人ヴィヴィアンの旅路

序章1──エピソード オブ ヴァナ・ディール──

 

 

 つづく▼

crimsondarkness.hatenablog.jp

 

*1:冒険者

*2:皇国軍戦績

*3:ラミアやスケルトン達の群れ

*4:ヴァナ・ディール/FF11用語辞典

*5:リンクシェル(遠くの人同士が会話できる魔法の貝殻)から生み出された真珠

*6:市街戦

*7:「ギルド」等と同義

*8:Delphyneと名づけた。後にLucyと改名。